2006 Fiscal Year Annual Research Report
始生代〜原生代海洋環境のアナログとしての温泉堆積物
Project/Area Number |
18654085
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
狩野 彰宏 広島大学, 大学院理学研究科, 助教授 (60231263)
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Keywords | 温泉 / トラバーチン / 日輪 / シアノバクテリア / 水酸化鉄 / 鉄酸化細菌 / 蛍光遺伝子プローブ |
Research Abstract |
鉄質沈殿物と炭酸塩沈殿物を析出する炭酸土類塩泉(Ca, Na, Clを多量に含み,Fe等の元素にも富む温泉)は,始生代〜原生代の海洋環境のアナログである.本年度は奈良県川上村の入之波温泉と大分県武田市の長湯温泉を重点的な対象として研究を進めた.この2つの地点は大規模な縞状炭酸塩堆種物(トラバーチン)が発達するという点で共通するが,前者は方解石,後者はアラレ石で構成され,組織的に多少の相違点が認められる.まず,両堆積場に発達する縞状組織の成因を理解するために,30〜40時間の連続観測を行ったところ,「縞」が光合成微生物であるシアノバクテリアの代謝を反映した「日輪」であることを確認した(高島・狩野, 2006; Kano et al., 2006).また,温泉水の化学組成と堆積物の鉱物組成の分析結果から,トラバーチンの鉱物組成は温泉水のMg/Caに支配されると考えられた.さらに,入之波温泉の源泉付近には鉄質沈澱物と方解石からなる特異的な堆積物が確認された.鉄質沈殿物は水酸化鉄であり,直径5ミクロンの枝状構造を示した.これは,おそらく鉄酸化細菌であるGallionellaの周囲に沈着したものであると考えられる. すなわち,鉄の沈澱は,大気酸素による鉄イオンの無機的酸化に加えて,鉄酸化細菌の代謝が関係していると結論付けられる. また,微生物の蛍光顕微鏡画像を解析するためのデコンボリューションシステムを購入した.これにより,蛍光遺伝子プローブ法の適用範囲が広くなり,硫酸還元細菌などの細菌グループの空間的分布を認識できるようになった.
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