Research Abstract |
共有結合に与るハロゲン原子(Cl,Br,I)の原子内電子分布の異方性に由来し,原子上の電気四重極子により表現できるような,近距離で働く指向性の強い分子間相互作用は,分子集合体の化学に新しい展開をもたらす可能性がある。特に,分子内の他の置換基によって,ハロゲン結合の形成されやすさが大幅に変化する点について,十分な物理化学的考察を行うことは,超分子化学等へ応用するにあたって,重要なファクターである。 平成19年度においては,平成18年度に行った計算を補完するために,C_6H_5-I, F-C_6H_4-I, C_5H_4N-I,O_2N-C_6H_4-X(X=Br,I), NC-C_6H_4-X(X=Cl, Br, I)(C_6H_5_I以外は,置換基どうし,または置換基とヘテロ原子の位置関係としてo, m, pの3種類),およびB_3N_3H_5-X(X=Cl, Br, I)(XがB,Nに結合する計2種類)を対象として,環に結合する置換基や環内のヘテロ原子が,ハロゲン原子周辺の分子間静電相互作用とハロゲン原子の原子内電子分布など電子構造に,どのように影響を及ぼすかについて,理論的に検討した。 その結果,ハロゲン原子上の電気四重極子モーメントが,ハロゲン原子とそれに直接的に共有結合する炭素原子の電荷の和と良く相関することが,明らかとなった。このことを基に,ハロゲン原子付近に生成される静電場が,分子内の電子構造によってどのように制御されているかについて,考察した。
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