2006 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティクスのためのメチル化DNA認識蛍光プローブの開発
Project/Area Number |
18655073
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松浦 和則 九州大学, 大学院工学研究院, 助教授 (60283389)
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Keywords | エピジェネティクス / メチル化DNA / 蛍光プローブ |
Research Abstract |
エピジェネティクスとは、ゲノムに書かれた遺伝情報を変更することなく、個体発生や細胞分化の過程において遺伝子発現を制御する現象の総称であり、その破綻により、様々な疾病を生ずることが知られている。その一例として、ゲノム上のDNAメチル化が知られている。ゲノムの異常メチル化を簡便に検出する手法が開発されれば、腫瘍マーカーや抗癌剤感受性の指標として有用であると思われる。本研究では、メチル化されたDNAを特異的に認識する二種の蛍光分子プローブの開発を目的としている。今年度は、DNA二重らせん構造をB-Z転移(右巻きから左巻きへの転移)することが知られているスペルミンの両端に蛍光プローブであるピレンを2つ導入した分子を設計・合成した。このプローブ分子が左巻きDNAに結合したときと右巻きDNAに結合したときで蛍光スペクトルの差がでるのではないかと期待した。また、メチル化されたDNA(特にGC配列)は、メチル化されていないものよりもB-Z転移を起こしやすいことが知られているので、このプローブ分子の蛍光スペクトル変化により、DNAのメチル化を識別できるのではないかと考えた。 ピレンアルデヒド2等量とスペルミンをシッフ塩基形成させた後、NaBH_4で還元することにより、目的の蛍光プローブ分子を合成した。この分子はpH7の緩衝液に可溶であり、分子内である程度エキシマーを形成していることがわかった。このプローブ分子の緩衝液にメチル化および非メチル化d(GC)_3を添加したところ、いずれも同様の蛍光スペクトル変化しか示さなかった。また、DNA濃度一定において、蛍光プローブ分子を50μM(溶解度限界)まで添加してCDスペクトル測定を行ったが、メチル化の有無にかかわらず、B-Z転移は誘起されなかった。したがって、今回の分子設計では、期待したようなメチル化DNAとの相互作用によりB-Z転移を誘起して蛍光スペクトルの起こすような蛍光プローブとはならないことがわかった。
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