2006 Fiscal Year Annual Research Report
白金抗ガン剤とマクロ環型キャリアからなる分子送達システムの開発
Project/Area Number |
18655074
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林田 修 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教授 (20231532)
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Keywords | ホスト・ゲスト / デリバリー / 白金抗ガン剤 / 分子認識 / シクロファン |
Research Abstract |
シスプラチンなどの白金抗ガン剤はアスベストなどによるガンの治療に広く用いられている。しかしながら、白金抗ガン剤は腎毒性に代表される副作用があるため、必要な部位に、必要な時に、必要な量だけ送達できる高精度ターゲティング治療に対する関心が急速に高まっている。そこで、「超分子化学によるタンパク質へのゲストデリバリー&部位特異的化学修飾法」を応用した新たなゲスト(白金抗ガン剤)送達システムの開発に着手した。今年度の具体的な研究成果について以下に示す。 1.多環性マクロ環型キャリアの合成 シクロファン骨格を2つ、3つ、5つ連結した多環性マクロ環型キャリアを合成した。既に合成に成功した2環性マクロ環型キャリアおよび5環性マクロ環型キャリアをリード化合物として、合成法と精製法の改良を検討することで、種々の多環性マクロ環型キャリアをグラムスケールで大量合成することに成功した。あわせて分子内空孔のサイズや形状が種々異なるシクロファンを基本骨格とした多環性マクロ環型キャリアも分子設計し、ゲスト捕捉に関する分子認識能の向上についての基礎的な知見を得た。 2.クラスター効果に基づくホスト機能の評価 合成した多環性マクロ環型キャリアの疎水性ゲストに対する結合親和性を評価した。代表的な白金抗ガン剤であるシスプラチシでは、白金部位が抗ガン活性に必須であることが知られていることから、疎水性の配位子を組み込ん翠新規白金錯体をゲストとして分子設計した。これら白金錯体に対するモデルゲストとして蛍光性ゲストを用いて、ゲスト捕捉能を蛍光滴定実験から評価した。シクロファン骨格を2つ、3つ、5つと増えるに従って、ゲスト捕捉能が飛躍的に向上するクラスター効果の発現が観測された。さらに、表面プラズモン共鳴法による結合と解離過程における速度定数の算出も行いクラスター効果の本質解明に向けて興味ある知見が得られた。
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