2007 Fiscal Year Annual Research Report
水素放出スペクトル解析に基づいた新しい材料診断技術の開発
Project/Area Number |
18656033
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
駒崎 慎一 Muroran Institute of Technology, 工学部, 准教授 (70315646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸野 豊 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (70150282)
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Keywords | 耐熱材料 / クリープ / 水素 / 昇温脱離分析 / 非破壊評価 / 余寿命評価 / マルテンサイト / フェライト系耐熱鋼 |
Research Abstract |
H18年度は、水素を組織トレーサとして用いた新しい劣化・損傷評価に関する検討を行うため、タービンロータ鋼のクリープに伴う水素放出特性の変化を昇温脱離分析(TDS)により調べた。その結果、クリープおよび加熱時効により水素放出スペクトルのピークの温度が低温側にシフトし、その高さも減少することがわかった。しかし、放出された水素量C_Hはクリープ寿命初期では大きく減少するもののその後はあまり変化せず、負荷応力(クリープ)によるC_H減少の促進効果も顕著ではなかった。これは、クリープ試験片の破断時間が564hと短く、クリープ損傷材(ゲージ部)と加熱時効材(グリップ部)の間で水素放出特性に影響を及ぼすミクロ組織因子の変化に大きな差がなかったためであると考えられた。H19年度は、引き続き本手法の適用性を探るため、Mod.9Cr-1Mo鋼を用い、長時間クリープに伴うその水素放出特性の変化を調査した。その結果、下記の知見が得られた。 (1)Mod.9Cr-1Mo鋼の陰極電解チャージ後の水素放出特性は加熱時効の影響は受けないものの、長時間クリープによって大きく変化し、水素放出量C_Hは破断時間の増加とともに顕著に増加する。 (2)すべての水素放出スペクトルは、Spectrum1(ピーク温度:65℃近傍)とSpectrum2(ピーク温度:100℃近傍)の2つのスペクトルに分離することができる。クリープによって増加するのはSpectrum2の水素量(Ch2)であり、Spectrum1の水素量(Ch1)は加熱時効およびクリープ後でも変化せず一定である。 (3)ビッカース硬さ、ラス幅、転位密度とCh2の間には良好な相関関係は認められないこと、さらに再焼なましによってナノ・ミクロ組織を初期状態に戻してもスペクトルは焼戻しまま材のそれに戻らないことから、負荷応力(クリープ)によるCh2の増加は幾何学的損傷(微小き裂、キャビティなど)に起因しているものと推測される。
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Research Products
(3 results)