Research Abstract |
・主要研究設備の改良。高分解能ビデオカメラを用いて,試料面の撥水状態を画像解析可能とした。前年度購入したサーモグラフィカメラでその温度分布を計測し,両者の時間的変化をふまえながら,表面温度と撥水状態を定量的に解析可能なシステムを構築した。そして,表面自由エネルギーの温度変化や位置的・時間的変化の把握とそれらに対する補正・校正技術の確立を進めた。 ・測定項目と方法。固体面と液滴で形成される撥水性は,時間的にも場所的にも変化してばらつきが多く,このことが試料間の比較や劣化状態判定に困難さを与えていた。これらの撥水状態変化の原因は,固体面の温度分布とその変化,液体の表面張力と温度の変化,固体面の吸水状態の変化,固体表面の有極性成分の配向による時間的変化などである。これらのうち,吸水量は試料の重量測定と誘電計測により評価可能であった。固体面の撥水状態のばらつきとその時間的変化は,誘電特性の計測と撥水状態の動画像解析により評価した。そして,これらの撥水状態のばらつきや時間的変化に対して,固体面と液滴の温度の変化が,試料の吸水量の変化や劣化・配向など,試料表面状態の計測・評価結果にどの程度影響するのかを定量的に計測・評価した。また,試料表面粗さの撥水性能への影響についても検討した。 ・得られた知見。撥水性を計測する試料面の温度が低いと,室温の噴霧液を用いた観測では,撥水性は見かけ上低く観測され,試料面の撥水性能が低いほど,その見かけの低下はより顕著となることが確認された。また,試料面の温度が高いと,撥水状態は良く評価されることが,用いた5種類の試料により確認された。更には,以上に比べて試料表面粗さの変化は,より大きな撥水性能の変化をもたらすことが確認された。最終年度には,この試料表面粗さと温度の撥水性評価への影響を詳細に検討していく。
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