Research Abstract |
本研究では,鉄筋に替わる構造用補強材として利用されている,アラミド繊維と他のFRP繊維を複数組み合わせることで,単繊維では得られないより高機能な構造用補強材の開発を日的とする.高機能FRP補強材として,(1)高弾性の連続繊維に高伸度の連続繊維を複数組み合わせることで,引張時に降伏棚域をもち,破壊が靭性的になるような鉄筋代替材としての補強材,ならびに(2)高アルカリ環境下でも劣化を抑えられるガラス繊維とアラミド繊維を組み合わせた補強材,ビニロン繊維とアラミド繊維を組み合わせた補強材の試作を行った.試作した補強材の引張強度試験を行い,日的とする機能の発揮を目指してさらに改良を行った.また,高機能繊維補強材の改良に向けて,その素材となる単繊維としての,アラミド繊維,ビニロン繊維,PET繊維を組紐状に編み,これにエポキシ樹脂を含浸,硬化させた連続繊維補強材を用いた鉄筋コンクリート梁の曲げ破壊とせん断破壊特性を検討した.さらに,シート巻立て補強,ロープ巻立て補強した柱のじん性向上メカニズムについても考察を行った。 その結果,単繊維FRPで補強したRC梁の曲げ破壊モーメントは,アラミドロッドの梁では異形鉄筋の梁より27%大きくなるのに対して,ビニロンロッドおよびPETロッドの梁では,異形鉄筋で補強した梁のおよそ93%から41%にとどまる.RC梁が終局状態に達しても,有機繊維補強材は弾性状態を維持している.一方PEDロッドでは梁の曲げ剛性が極めて小さいため,載荷初期段階からひび割れの進展とロッドの付着滑りの繰返しにより,ロッドの引張強度に対する作用応力の比は0.15と小さい値を示した.作用応力比の設定は研究者によって異なるが,今後有機繊維補強材のもつ強度や伸度を生かすためにも,適切な応力比の設定と終局時の破壊特性のさらなる追求が必要である. シート巻立て補強やロープ巻立て補強した柱のじん性向上メカニズムについて,実験結果を基に解析した。これより,主鉄筋降伏後の正負交番載荷時において連続繊維補強材がかぶりコンクリートの剥落を防止し,せん断ひび割れの開口を抑えることにより,部材の曲げ変形のメカニズムが保たれ,じん性が向上することが明らかになった。
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