Research Abstract |
本年度は,土木事業に対する世論の動向を把握するため,一般の人々の土木事業に対する意識が,ここ数年の間にどのように変化しつつあるのかについて検討した.この目的の下,京都市内の世帯を対象として,2001年と2006年に実施した調査から得られたパネルデータを用いて,土木事業に関わる肯定的・否定的論点に対する人々の認知度の変化について分析を行った.その結果,一般の人々は,概ね,土木事業の肯定的論点と否定的論点ともに,一定程度認知していることが確認された一方で,「土木事業は役に立たないものを造る」という否定的認知一つについては,2001年からの5年の間に,有意に強まったことが示され,人々の土木事業の意義や必要性についての理解が低下しつつある可能性が示された. 次に,公共事業に対する人々の賛否意識に影響する心理要因を明らかにするため,全国の都道府県の世帯を対象とした調査データを用いて,人々の賛否意識とその規定因との因果関係について政治心理学的な分析を行った.その結果,公共事業に対する世論を個人がどのように認知しているかを表す「認知世論」が,当該個人の賛否意識を規定する重要な影響要因であることが示された.さらに,「身近な他者の意見」,「公共事業の論点認知」,「マスコミ賛否」,「公共事業関係者の誠実性の信頼」が,個人の賛否意識に大きく影響することが確認された.特に,マスコミ報道が個人の認知世論に対する影響を通して,当該個人の賛否意識にも影響を与えるという間接的な因果関係が示された.
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