2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18656228
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
山村 方人 九州工業大学, 工学部, 助教授 (90284588)
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Keywords | 乾燥 / コーティング / 薄膜 / 光異性化 / 紫外線 / シストランス転移 / フォトクロミック / 配向 |
Research Abstract |
フォトクロミック分子であるアゾベンゼンと有機溶媒であるメチルエチルケトンからなる2成分溶液を初期厚み400ミクロンで塗布しガラス基板上に液体薄膜を形成した。薄膜上方に波長365nmの直線偏光紫外光源を設置し、光強度、照射角並びに偏光状態を変化させた場合における薄膜からの溶媒乾燥速度を、精密電子天秤を用いた薄膜重量の時間変化から算出した。アゾベンゼン質量濃度が1wt%以下と希薄な場合には、紫外光照射による乾燥速度変化は観測されなかった。しかしアゾベンゼン濃度が増加するにつれ乾燥速度は一端低下したのち再び増加し、低濃度域では乾燥抑制効果が、高濃度域では逆に乾燥促進効果がそれぞれ観測された。乾燥速度変化量は最大でも非光照射時の数%と非常に小さいものの、偏光照射による乾燥抑制効果は過去に報告がなく、本効果の存在を実験的に示したのは研究者の知る限り本研究が初めてである。この乾燥速度変化は薄膜表面のガス相拡散抵抗が支配的な定率乾燥期間で見られた。乾燥促進・抑制効果を詳細に検討するために偏光方向の異なる2つの直線偏光を用いて同様の測定を行ったところ、低濃度域における乾燥抑制効果はP偏光ではほとんど見られないが、S偏光では照射角に依存した大きな変化を示し、照射角45度において最も高い抑制効果を示すことを見出した。アゾベンゼン分子はその長軸が偏光方向に対して垂直に配向する性質を持つことを考えると、S偏光照射時にアゾベンゼン分子が溶媒拡散方向に対して傾斜して配向することにより、薄膜表面の蒸気圧変化が誘起されたものと予測される。更に紫外線強度を5〜5000μW/cm^2の範囲で変化させた測定から、乾燥抑制効果は500μW/cm^2以下の紫外線強度でのみ観測され、より高強度の光照射では乾燥促進に転ずることが明らかとなった。
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