Research Abstract |
地球温暖化抑制のため、火力発電所等の排ガスから分離・回収したCO2を,地下深度1km前後にあって,間隙率の比較的大きな岩石からなる地下帯水層に圧入して溶解・固定化するという方法が検討されている.また,この方法では,浸透性が小さい天然の構造性バリアー,すなわちキャップロックが存在することを前提とし,その下部にCO2を圧入することになっている.しかし,地殻活動が盛んな日本では,そのように健全で広大なキャップロックがある場所は限られている.そこで本研究では,現位置反応法で形成した人工バリアーによってキャップロックの欠損部を覆い,また,断層等の移動経路を遮断してCO2の漏洩を防止するという,従来にない新技術を開発する.この目的を達成するために本年度は,以下のことを実施した.まず,現位置の状況を模擬する室内実験を実施するための装置を作成した.中心となる圧力容器は,腐食を避けるために肉厚のステンレス鋼管とした.その容器を100μmのガラスビーズで満たし,それを模擬岩石とした.容器の容量は2リットル程度である.容器内の圧力はシリンジポンプで調整する.また,CO2と反応する溶液(反応性グラウト)としてCa(OH)2水溶液を用意し,その溶液とCO2を,それぞれ別に容器内に流し込んだ.そして,Ca(OH)2水溶液とCO2との反応によって固形物を生成させ(現位置反応法),それによる模擬岩石の浸透性変化を計測した.なお,Ca(OH)2の溶解度は,水100g当たり0.165gに過ぎず,その程度の水溶液では仮にCO2と良く混合して十分な反応が起きたにせよ,間隙を閉塞するに足る沈殿物が生成される可能性は低い.これを解決するため,Ca(OH)2をショ糖のような炭水化物と結合させてサッカラートの形にすることで,溶解度を大きくした.この実験の結果,反応性グラウトとCO2との化学反応と思われる効果によって,模擬岩石の浸透率が約1/20に低下することが明らかになった.
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