2006 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア転写因子の老化への関与の分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
18657002
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
松浦 悦子 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (00111691)
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Keywords | ミトコンドリア / ショウジョウバエ / 老化 / TFAM |
Research Abstract |
ショウジョウバエとヒトのそれぞれのTfam遺伝子について,mtDNAへのTFAMの特異的な結合に必要とされているC末端側25アミノ酸残基を欠く遺伝子(ΔC)を作成し,それらを挿入したショウジョウバエの系統と,さまざまなプロモーターをもつGAL4系統を交配させることによって,その子孫個体における挿入遺伝子の組織または時期特異的な発現を調節することができる。本年度は,(1)過剰なTfamの発現が個体の生存と寿命に及ぼす影響,および(2)ミトコンドリアの形態への影響,を明らかにすることを目指した。 (1)GAL4系統のもつプロモーターにより,全細胞,および神経系,幼虫の翁肉系などの組織にTfamを発現させたところ,過剰な発現は致死を引き起こすことが示され,その効果は,ショウジョウバエのΔC-Tfamの場合の方が強かった。この発現をヒートショックで作動するプロモーターで調節した場合には,産卵後の発現であれば羽化に至ることから,TFAMは発生の過程で重要な役割も果たしていることが示唆された。また,過剰発現個体の寿命は,♀ではショウジョウバエのΔC-Tfamを用いた場合に極端に短くなっていたが,♂ではショウジョウバエ>ヒトの順に減少が大きくみられた。この性による差,生物種による差異については,さらに検討を進める必要がある。 (2)ショウジョウバエでは,通常より膨大し内部のクリステが粗になったミトコンドリアの頻度が,老化するにつれて高まることを,すでに観察している。ΔC-Tfamの過剰発現個体では,若い個体のミトコンドリアの形態は正常なものと差はみられないが,最大寿命に近づいた個体では,クリステが断片化したように極端に構造が乱れたミトコンドリアがみられた。このような変化を起こしたミトコンドリアが増加することと寿命の短縮との関連を明らかにするため,今後はミトコンドリアの構造と活性の変化について,あわせて調べる予定である。
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