2007 Fiscal Year Annual Research Report
食物網における表現型可塑性の反応・共反応に関する進化生物学的研究
Project/Area Number |
18657006
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 欣也 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (30222186)
|
Keywords | 食物網 / 表現型 / 可塑性 / 共進化 / 頭でっかち / 外鰓 |
Research Abstract |
生物は差し迫った環境変化に対して何らかの反応をする。エゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は北海道の池や小さな水たまりに形成される生物群集の一員である。エゾサンショウウオは群集の他のメンバー(餌・捕食者)の存在によって誘導される形質の可塑性を示す。 行動変化は、環境に対応した動物の適応的可塑性の1つである。捕食者であるヤゴがいるとき、エゾサンショウウオは池の底で動きを止める。この行動が捕食危機に対する防衛態勢としての直接の適応的反応であるかを調べるための実験を行った。静止態勢にあるエゾサンショウウオは、動いているものよりもヤゴの捕食をうまく免れた。 このとき、エゾサンショウウオはもう一つの表現型可塑性を示す。ヤゴが存在することによって水底で静止態勢をとっている個体は、そうしていない個体に比べて外鰓の発達が著しい。この現象を、静止防衛態勢をとることによって生じた酸素不足を補償するための補償的な形質可塑性と考えた。そして発達した外鰓は、酸素不足を補償する機能が高まっているかを調べるための実験を行い、その補償能力を確認した。鰓の生理機能の知見から、外鰓のこの発達を促す直接原因は酸素不足と類推することが合理的である。 続いて、捕食者の有無と、溶存酸素の高低の要因を操作した実験を行った。その結果、酸素不足ばかりでなく、ヤゴの存在が、外鰓の発達を誘導させる直接の要因になっていることが判明した。溶存酸素が高く酸素不足を招かなくても、ヤゴの存在が外鰓の発達を促すのである。
|