2006 Fiscal Year Annual Research Report
葉の細胞数をモニターする情報の実体とその器官サイズ制御における役割の解明
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18657020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀口 吾朗 東京大学, 大学院理学系研究科, 特任助教授 (70342847)
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Keywords | シロイヌナズナ / 細胞増殖 / 細胞伸長 / 補償作用 / ANGUSTIFOFIA3 / OLIGOCELLULA |
Research Abstract |
本研究は葉の細胞増殖がある種の突然変異により抑制されると、分化過程における細胞伸長が促進される「補償作用」の分子機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、単独では軽微な細胞数の減少を示すが、補償作用を誘発しないoligocellula (oli)変異株群を用いた解析を行った。異なるoli変異株を交配し様々な2重変異株を作製したところ、細胞数の更なる減少とともに過剰な細胞伸長が誘導されることが明らかになった。従って、補償作用の誘導には細胞数のある程度以下への減少が必要であることが示唆された。さらに、単独で補償作用を示すangustifolia3 (an3)とoli変異株を交配したところ、多くのoli変異がan3の細胞数をさらに低下させ、それに応じ細胞伸長を促進する効果を持つことが明らかになった。このことは、an3とoli変異が影響を与える細胞増殖経路が、補償作用誘導性において何らかの類似性を示すものである。そこで、oli変異株の原因遺伝子の同定を進めたところ、oli7変異株においてAt5939740に23塩基の欠失を見いだした。この遺伝子のT-DNA挿入変異はoli7と同様の表現型を示したことから、At5939740はOLI7遺伝子であると結論した。OLI7は真核型リボゾームのサブユニットの一つであるRPL5bをコードしていた。この結果は、リボソームの機能低下がもたらす細胞増殖能の低下が、補償作用を引き起こす要因の一つであることを示唆している。一方、oli1 an3 2重変異株は、細胞数と細胞サイズについてan3と同様の表現型を示したことから、OLI1およびAN3は同一の細胞増殖制御系で働く因子であることが示唆された。なお、細胞増殖能の異なるキメラクローンを作出するために必要なベクターはほぼ構築が完了し、このうち一部は、植物への形質転換も完了した。
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