2007 Fiscal Year Annual Research Report
葉の細胞数をモニターする情報の実体とその器官サイズ制御における役割の解明
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18657020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀口 吾朗 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特任准教授 (70342847)
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Keywords | シロイヌナズナ / 細胞増殖 / 細胞伸長 / 補償作用 / AN3 / OLI / GDP1 / リボソーム |
Research Abstract |
本研究は葉の細胞増殖がある種の突然変異により抑制されると、分化過程における細胞伸長が促進される「補償作用」の分子機構を明らかにすることを目的としている。これまでに、変異株になって初めて補償作用を示すoligocellula (oli)変異株群のうち、oli7がリボソームタンパクの一つであるRPL5Bをコードすることを見いだしていた。本年度は、OLI2がリボソームRNAの修飾に関わるNOP2様タンパクを、OLI5がOLI7パラログであるRPL5Aをコードすることを明らかにした。一方、補償作用を示すan3において発現レベルが低下した遺伝子として、RNA結合モチーフを持つ機能未知のタンパク(GDP1と命名)を見いだし、その機能欠損変異株が、葉の形、細胞増殖能の低下、さらにan3背景における補償作用の促進効果の点で、oli2, oli5, oli7と類似した表現型を示すことを明らかにした。さらに、oli7 gdp12重変異株の表現型は、単独変異株が示す表現型とほぼ等しく、これらの因子が同一の遺伝経路で働くことが示唆された。興味深いことに、GDP1の発現はoli7背景で低下しておりGDP1がOLI7よりも下流で働くことが示唆された。一般的に、リボソームタンパクの欠損変異が示す表現型は、その表現型が翻訳の全般的な低下によるものなのか、特異的な因子の発現異常によるものなのかを区別することは難しい。しかし、今回得られた結果は、リボソーム関連変異株やgdp1が示す細胞増殖の低下、補償作用や葉の形態異常といった表現型が翻訳活性の低下に伴う非特異的な表現型ではないことを強く支持する。これらの結果はまた、現在でもあまり研究が進んでいない、翻訳レベルでの新規遺伝子発現制御機構の存在を示唆するものである。
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