2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18657036
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
千田 俊哉 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物情報解析研究センター, 主任研究員 (30272868)
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Keywords | 結晶成長 / 無酸素条件 / 結晶化 / 酸化還元 / フェレドキシン / フェレドキシン還元酵素 |
Research Abstract |
平成18年度は、主に酸化還元に関与する蛋白質群の結晶化に力を入れ、以下の結果を得た。まず、微生物由来の電子伝達蛋白質であるフェレドキシン(BphA3)に関して、酸化型の結晶を得た。本蛋白質は、分子表面にCys残基を持つため、非常に結晶化が困難であったが、条件を検討することで結晶を得ることができた。次に、BphA3の還元型の結晶を得るために、申請者らが開発してきた無酸素条件下結晶化用の無酸素チャンバーを利用して、実験を行った。BphA3をチャンバー内でジチオナイトを用いることで還元し、これを無酸素条件下で結晶化することで、還元型の結晶を得ることができた。構造解析の結果、BphA3は、酸化型と還元型で構造が異なることを見出した。次に、BphA3と電子の授受をするフェレドキシン還元酵素であるBphA4とBphA3との複合体の結晶化を試みた。本複合体は、還元状態では安定な複合体を形成するが、酸化状態では複合体の形成が極めて弱いことが明らかになっている。このため、複合体の結晶化には無酸素条件の利用が不可欠である。無酸素チャンバー内でBphA4を還元し、酸化型のBphA3と混合して結晶化を行ったところ、複合体の結晶を得ることに成功した。さらにこの結晶をもとに結晶構造を決定することにも成功した。この結晶構造は、電子伝達の中間体複合体としては初めてのものである。これまでに、フェレドキシンとフェレドキシン還元酵素の複合体の結晶構造は3例ほど決定されているが、いずれも両者が酸化型の構造で、反応中間体と言えるものではなかった。また、上で述べたBphA3の酸化型、還元型の結晶構造とBphA3-BphA4複合体の結晶構造を比較することで、BphA3とBphA4の間の酸化還元依存的な相互作用調節機構に関して新しい知見を得ることができた(現在論文投稿中)。上記に加え、2原子酸素添加酵素BphC(JF8)の結晶化の検討も無酸素条件で行った。無酸素条件下での結晶化を行うことで、酵素-基質複合体の結晶構造の決定、さらには、活性中心のMnをFeに置換したFe置換BphC(JF8)の結晶化、および構造解析に成功した。特にFe置換体に関しては、超高分解能の回折データを収集することに成功しており、MnタイプのBphC(JF8)の結晶構造と比較することで、蛋白質のイオン選択性に関して新しい知見が得られるものと期待している。平成18年度は、以上の実験を通じて無酸素チャンバー内での結晶化に関して、標準となる手法を確立することができた。
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Research Products
(3 results)