2007 Fiscal Year Annual Research Report
電子波動関数から探る蛋白質の立体構造構築原理と機能予測
Project/Area Number |
18657047
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 実 Tokyo Institute of Technology, バイオ研究基盤支援総合センター, 教授 (50162342)
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Keywords | 蛋白質 / 分子軌道 / 波動関数 / 立体構造 / 蛋白質機能 / フロンティア軌道 / 酵素 / 水和 |
Research Abstract |
1.超分子モデルによる水和した酵素の電子状態に関する研究 タンパク質と水和圏からなる超分子の電子波動関数を解析することによって、タンパク質と水分子間に起こる量子力学的な過程を詳細に分析した。その結果、タンパク質と水分子との間に起こる電子移動は第一水和圏に存在する水分子を介して起こり、水和に伴う安定化エネルギーは主に第一水和圏と第二水和圏から生じることが分かった。また、水分子を明示的に扱う計算と連続体近似計算の結果を比較することにより、タンパク質の電子波動関数、分子内部エネルギー及びタンパク質-水界面の相互作用形態に関して顕著な違いが生じることが判明した。水和状態では、タンパク質分子と水和圏からなる超分子の電子状態が安定化されるとともに、特に触媒部位では水分子との間で高エネルギー状態にある電子を介した特異的な電子移動相互作用が起こっていることが判明した。以上述べた通り、タンパク質周囲の水分子の役割について電子波動関数の視点から新規な描像を得た。 2.小タンパク質のフォールディング過程における電子波動関数の役割と考察 3つの小タンパク質分子に対して、フォールディング過程と電子波動関数の関係を詳細に解析した。具体的には、小タンパク質の分子動力学計算を実行することによってフォールディング過程をシミュレーションし、サンプリングした構造全てに対して分子軌道計算を実行し波動関数の時間発展に関する解析を行った。その結果、フォールディング過程で分子内部に電子移動が起こり、その方向が主鎖間の水素結合や疎水コアを形成する残基間であることが判明し、フォールディングの駆動力として残基間電子移動が重要な相互作用であることが示唆された。また、フォールディング過程を波動関数-立体構造相関の観点から解析し、電子分布の広がりと構造形成の間に直接的関係が存在することも示した。
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