2007 Fiscal Year Annual Research Report
マダガスカル南西部乾燥地帯における焼畑耕作と住民の生存戦略
Project/Area Number |
18657079
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
安高 雄治 Kwansei Gakuin University, 総合政策学部, 准教授 (50336187)
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Keywords | 焼畑耕作 / 乾燥地 / リモートセンシング / 生業活動 / 牧畜 / 食物摂取 / マダガスカル |
Research Abstract |
研究期間の二年目にあたる2007年度は,研究計画通り(1)個人・世帯データ収集,(2)対象住民の生態人類学的調査,(3)リモートセンシング分析を行った. まず,各個人・世帯の基本的属性,対象集団の社会文化的背景,動植物資源に関する知識と利用状況,土地所有や土地利用に関する基礎的データを収集した.その後,これらのデータを基に,(1)生業活動の詳細と各活動に対する時間配分(タイムアロケーション)調査,(2)摂取食物調査,(3)焼畑耕作による森林伐採及び自然資源利用について測量・直接観察・聞き取り調査を行い,帰国後はデータ入力及び分析を進めた. 分析の一部は現在も進行中であるが,これまでに明らかになったのは主に以下の3点である.(1)対象集団は農耕及び牧畜を主要な生業としているが,共に明確な性・年齢別の労働分担が見られ,社会文化的に最も重要視されているウシの世話には結婚前の男性が従事し,適任者不在の場合は世帯外への委託も行われていた.また,戦略的というよりは寧ろ,世帯構成によって生業形態には大きな多様性が観察された.(2)摂取食物における頻度では塊茎類(キャッサバ及びサツマイモ)が全体の85%程度を占め,これらの約9割は収穫後すぐに乾燥したものであり,乾燥地におけるフードセキュリティの根幹を形成していた.一方,タンパク質源としての家畜消費は葬式等の儀礼時に限定されており,日常的に消費されることはなかった.タンパク質源は,主に潜水漁・突き漁によって得られる海洋資源に依存していた.(3)対象集団の居住する地域の内陸部には厳正自然保護区が存在するが,さらにその内陸部は人々の目の届かない広大な無居住地帯となっている.この地域の衛星画像を経時的に分析した結果,2004年から2006年にかけて森林伐採面積が急拡大しており,集落から離れた無人地帯において違法な焼畑耕作が行われ,かつ急増していることが明らかとなった。
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