2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18658019
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
豊田 和弘 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (50294442)
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Keywords | 病原微生物 / 基本的親和性 / サプレッサー / リポキシゲナーゼ / ジャスモン酸 / 病害抵抗性 / サイレンシング |
Research Abstract |
本研究課題では、病原糸状菌との基本的親和性成立に関与する植物遺伝子について解析し、その機能の改変に基づいた新たな病害防除技術を提案することを目的としている。これまでに、エンドウ褐紋病菌が生産する病原性因子(サプレッサー)に対する宿主植物の応答遺伝子をサプレッション・サブトラクティブハイブリダイゼーション(SSH)法で解析した。シーケンスの結果、約150遺伝子が単離され、その1つに葉緑体局在型のリポキシゲナーゼ(LOX,lipoxygenase)をコードする遺伝子が含まれることが明らかとなった。一般に、葉緑体局在のLOXはジャスモン酸合成への関与が推定され、サプレッサーが宿主植物のジャスモン酸合成経路を転写レベルから活性化していることが予想された。実際、LOXとその下流で働くallene oxide synthase(AOX)、allene oxide cyclase(AOC)ならびに12-oxophytodienoic acid reductase(OPR)のサイレンシング個体では、エンドウ褐紋病菌に対する罹病性が低下し、病斑形成の抑制が認められた。この結果は、サプレッサーの作用発現にはLOXを介した応答(ジャスモン酸経路)が関与し、これと拮抗するサリチル酸経路に依存した防御応答の抑制が関連しているものと考えられた。同様に、毒性発現にジャスモン酸経路を必要とする植物細菌毒素(コロナチン)の作用を調べた結果、いずれのサイレンシング植物でも壊死斑の形成が著しく阻害(遅延)された。以上の結果は、サプレッサーを含む病原性因子の作用発現は宿主の情報伝達系や代謝に依存しており、それらに関与する宿主遺伝子の改変によって、一部の病原菌(糸状菌、細菌)に対する耐性を付与できることを示す。
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