2006 Fiscal Year Annual Research Report
アワノメイガ類における雌雄間超音波コミュニケーションの検証
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18658021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 幸男 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (60125987)
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Keywords | アワノメイガ / 雌雄間交信 / 超音波 |
Research Abstract |
1.アワノメイガのオスによる超音波の発音.本種のオスはメスの性フェロモンに反応して定位飛翔したのち,メスの近傍で羽ばたきをし,さらに左右両翅を背側に直立させ細かく振動させた.この翅の直立・振動時に25-100kHzの超音波が発音されており,オスの超音波はメスへの定位後に発するcourtship songであると考えられた.また,オスの超音波は1cmの距離で最大音圧が約50dB peSPLであり,これまで報告されているガ類の超音波と比べはるかに小さい音であった.ついで,アワノメイガの聴覚神経の応答閾値を調査したところ,オスの超音波のピークである40-60kHzにもっとも高い感受性を示した.さらに,聴覚神経は約45dB peSPL以上の音圧に応答可能であることから,メスの近傍で発せられるオスの超音波はメスにとって可聴音であることが確認された. 2.発音メカニズム.本種は,中胸と前翅にあるオス特異的な鱗粉と膜を用いて発音することが分かった.すなわち,i)ハイスピードカメラによる発音時の翅の軌跡とその際に発せられる超音波の同期記録,ii)レーザードップラー変位計による振動加速度の計測,およびiii)鱗粉表面のSEM観察の結果から,胸と翅の鱗粉の摩擦により生じる高周波の振動が翅の膜で共鳴することで発音される.このような器官による微弱な発音はこれまでどの生物においても報告はなく,新奇な発音メカニズムを発見した. 3.発音の機能.本種のオスによる発音の機能を解明するため,聴覚器官を破壊したメス,発音器官を破壊したオスを用いて交尾実験を行った.オスの超音波は交尾に必須ではないが,発音はメスの逃避を抑制してオスの繁殖成功度を上げる役割を持つことが分かった.
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