2006 Fiscal Year Annual Research Report
体腔器官の分子移植による細菌の構造と機能の大規模改変とその応用
Project/Area Number |
18658033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 幸作 京都大学, 農学研究科, 教授 (90142299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 助教授 (30273519)
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Keywords | 体腔 / Sphingomonas属細菌 / 環境浄化 / 分子移殖 / ダイオキシン / 膜輸送機構 / bioremediation / フラジェリン |
Research Abstract |
スフィンゴモナス(Sphingomonas)属細菌A1株は、細胞表層に物質輸送に関わる巨大な孔「体腔」を形成する。この孔を様々な他の細菌に分子移植することによって、物質輸送の改善された、つまり細胞表層の構造と機能が大幅に改善された細菌の育種が期待される。体腔は、ABCトランスポーター[ABCタンパク質(S)と透過酵素(M1とM2)から成る]によってその形成が支配されており、S、M1、或はM2の遺伝子を破壊するとアルギン酸資化能も体腔形成能も失われる。このことから、体腔を含めた「超チャネル」の"分子移植"の可能性が示唆された。そこで、ダイオキシン(ジベンゾフラン)分解菌であるSphingomonas witthii RW1、ポリプロピレングリコール分解菌であるSphingomonas subartica、及びポリデキストロース分解菌であるSphingomonas sunguisにA1株の「超チャネル」関連遺伝子を導入した結果、巨大な体腔が、しかも構成的に形成された。そして、体腔を移植された細胞は、野生株の倍近い速さで上記物質を分解する能力を獲得した。この結果は、体腔が分子サイズ(低分子、高分子)や分子形態を問わず、任意の物質の膜透過を促進することを示しており、体腔の分子移植が細胞表層機能の改変に極めて有用であることが明らかになった。ただ、移植された体腔のような巨大分子器官は宿主(レシピエント)の細胞骨格に組み込まれるため、器官供与体(ドナー)と宿主との遺伝学的、構造学的相性などが問題になると考えられる。それは今後の問題として、この"器官の分子移植"は、今後の細胞機能改変の有用な手段になると考えられた。また、体腔を移植したRW1株は、土壌中に添加したダイオキシンも高い効率で分解した。この結果、体腔の分子移植菌を環境浄化に十分適用できることが示された。ただ、遺伝子組換え菌であるため、その実際的な応用にはその安全性など検討すべき事項が残されている。
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