2006 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞・組織の常温ガラス化による新たな長期保存法の開発
Project/Area Number |
18658040
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
菅原 康剛 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70114212)
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Keywords | 植物 / 細胞・組織 / 乾燥耐性 / ガラス化 / 保存 |
Research Abstract |
ゼニゴケ培養細胞では、ショ糖を含む培地での前培養によって細胞の乾燥耐性を増大させ、さらに細胞の含水量を十分低下させることにより細胞を常温でガラス化させることに成功している。これらの結果は、多くの植物培養細胞・組織をガラス転移温度以下の常温でも長期保存が可能になることを示唆している。本研究では、植物培養細胞を用い、細胞の乾燥耐性、ガラス化の機構を解明し、多くの細胞・組織の常温ガラス化による長期保存法の開発を目的として、以下の検討を行った。 (1)細胞の乾燥耐性の誘導とガラス化には、糖培地での前培養が不可欠であり、まず(1)前培条件の解析、(2)前培養時の細胞内の糖、タンパク質の変化の解析、(3)阻害剤処理の耐性増大への影響について解析を行った。その結果、(1)前培養により細胞内に糖などが蓄積し、短時間で乾燥耐性が増大すること、(2)前培養時の最も効果的な糖はショ糖であるが、他の糖も効果がみられること、(3)短時間で耐性が大きく増大するゼニゴケ培養細胞では、前培養時に熱可溶性のタンパク質が数種類合成されるが、耐性があまり増大しないシロ犬ナズナ培養細胞では、これらのタンパク質が合成されないこと、(4)タンパク質合成阻害剤のシクロヘキシミド(CH)は、これらのタンパク質の合成を阻害し、同時に細胞の耐性増大を阻害することが明らかになった。 (2)細胞のガラス転移温度(Tg)を測定し、細胞の異なる含水量におけるTgの相図を作成した。さらに、CHによる阻害剤処理により、Tgの低温側へのシフトが観察され、細胞のガラス化に影響するタンパク質の存在が示唆された。 (3)異なった細胞含水量における細胞の保存性について解析を行っている。 (4)細胞内のガラス化に関する解析を行うために、培養細胞からのプロトプラストとプロトプラスト由来の単細胞系における乾燥耐性の確立を試みた。その結果、前培養によりプロトプラストあるいはプロトプラスト由来単細胞でも高い乾燥耐性が得られることが明らかになった。さらにプロトプラストの系を用いて、リポソームとの融合による蛍光プローブの細胞内への導入条件について検討を行っている。
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Research Products
(1 results)