2006 Fiscal Year Annual Research Report
実験動物種の食品成分の応答性の違いを利用したトランスクリプトーム解析に関する研究
Project/Area Number |
18658051
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 郁男 東北大学, 大学院農学研究科, 教授 (40136544)
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Keywords | db / dbマウス / Zuckerラット / 共役リノール酸 / トランスクリプトーム |
Research Abstract |
本研究では、in vivo実験において共役リノール酸摂取に対して脂肪細胞が逆向き(分化亢進とアポトーシス誘導)の応答を示したZucker(fa/fa)ラットとC57BL/6Jマウスについて、共役リノール酸という刺激に対して応答する遺伝子群について発現プロファイリングを行う。そこでそれぞれから初代培養前駆白色脂肪細胞を調整し、アルブミンと結合させた共役リノール酸を培地に添加して培養した。C57BL/6Jマウス由来白色脂肪細胞は、共役リノール酸添加培地で培養することにより、アディポサイトカインである"レプチン"及び"アディポネクチン"の分泌が顕著に抑制され、共役リノール酸による脂肪細胞の分化抑制が誘導されていることが示唆された。一方、Zucker(fa/fa)ラット由来白色脂肪細胞は、成熟脂肪細胞になると培養セルへの定着が弱くなりin vitro実験に使用できないことが判明した。よって、培養細胞系での発現プロファイリングを断念し、in vivo実験系において共役リノール酸を摂取させ、脂肪細胞における応答の違いを評価することとした。対象には保有する遺伝子変異がほぼ同等(レプチンレセプター変異による2型糖尿病モデル)であるdb/dbマウスとZucker(fa/fa)ラットを用いた。AIN76に順じたコントロール食(6% Corn oil)もしくは共役リノール酸食(5% Corn oil+1% 10tc-CLA)を4週間摂食させ、飼育終了後に大動脈採血により屠殺を行い、血液・肝臓・脂肪組織を得た。その結果、腎臓周辺白色脂肪組織重量は共役リノール酸食により、db/dbマウスでは劇的に減少し、Zucker(fa/fa)ラットでは増加した。このことは、db/dbマウスで脂肪細胞のアポトーシスが誘導され、Zucker(fa/fa)ラットでは脂肪細胞の分化亢進が起きた事を示唆した。また、肝臓トリグリセリド濃度は共役リノール酸食により、db/dbマウスでは劇的に上昇し、Zucker(fa/fa)ラットでは低下した。このことは、db/dbマウスで肝臓のインスリン抵抗性誘発脂肪肝が発症し、Zucker(fa/fa)ラットでは肝臓のインスリン抵抗性誘発脂肪肝が改善した事を示唆した。以上のことから、共役リノール酸摂取に対する応答が逆を向いている組織サンプルをマウスとラットから得ることができ、今後これらを用いて、発現プロファイリングを行っていく予定である。
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