Research Abstract |
対象樹木と樹勢ランク付け 岩手大学農学部附属植物園内の巨樹・古木を含む高齢樹木を中心に12種30個体を選んだ。個体サイズの大きいものはシナサワグルミ,クログルミなどのクルミ類で胸高直径100cmを超え,幹枝の一部が倒壊していた。高齢衰弱木としてはミズナラ,アズキナシなどがあった。樹皮,樹形,新葉新枝着生状態など,総合的に樹勢ランク付けをおこない,大きく3ランクに区分した(良いものから順にA, B, C)。 幹維管束形成層直近木部組織の呼吸速度 全対象木で得られた幹呼吸速度を乾重ベース含水率との関係でみたところ,良好な直線関係が認められ,相関は高度に有意であった。呼吸速度一含水率関係の上縁にプロットされる樹木のほとんどはAランク,下縁にプロットされる樹木のすべてはCランクであった。これらの結果は,幹の生理活性が樹液流と連動した水分生理と直接的に結びついていることを示唆し,樹木保全技術上きわめて有用な情報である。 アデニンヌクレチド構成と呼吸速度 上記の幹呼吸速度の測定と並行して木部組織におけるATP, ADP, AMP量を測定した。これらアデニンヌクレオチド総量は,幹の呼吸速度ときわめて高い相関を示した。また,呼吸速度の低いものではATPが相対的に低くなる傾向が認められ,エネルギー充填比率との密接な関係がうかがえた。なお,各成分の構成比率については,サンプル採取時期や測定前処理の影響を強く受けるとみられた。これらの点については,平成19年度に詳細を検討する必要がある。
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