2007 Fiscal Year Annual Research Report
草本リグニンと木本リグニンを区別する鍵構造としてのエリトロ型β-O-4構造
Project/Area Number |
18658068
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 雄二 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30183619)
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Keywords | リグニン / エリトロ / 草本 / 細胞壁 / 赤外スペクトル |
Research Abstract |
リグニン化学構造は、樹種の違い、細胞組織の違い、細胞壁の中の層の違いなどによって異なっており、リグニン化学構造の不均一性という概念は広くリグニン化学者の中に定着している。最近申請者は、幅広い多様性・不均一性の中に、ひとつの非常にシンプルな規則が存在するのを見出した。それは、広葉樹・針葉樹の違い、樹種の違い、植物の分類学上の違いを超えて、リグニンの最も主要な構造であるβ-O-4構造の立体異性体比(erythro/threo比)が、リグニンの芳香核構造比(syrinngyl/guaiacyl比)と非常に高く相関しているということである。本研究では、草本植物のリグニンと、樹木リグニンの化学構造がどのような意味で共通しておりどのような意味で異なっているかを、エリトロ型β-O-4構造が鍵構造であるとの仮定のもとに分析する。それによって、植物の進化とリグニン化学構造の関連を追及する有力な手がかりを得る。 初年度に引き続き、植物分類学にしたがって、広範囲の植物試料を採取して、リグニン構造分析用の試料を調製した。Klason法が草本類や葉などのリグニン定量には適用できないことを前提として、それに代わる方法として、赤外分光スペクトルによる芳香核量の推定を行った。その結果、試料中の芳香核量は、草本類や葉において、木本の二次木部試料と比較すると著しく低く、その量は、試料からのニトロベンゼン酸化生成物の収率ならびにオゾン分解によるエリトロン酸収率と極めてよい相関を示した。つまり草本類や葉においては、リグニン量が低く、エリトロ型β-O-4構造量が低いことを実証することができた。また、草本試料であっても、それが堅い試料である場合には、リグニン量が低く、エリトロ型β-O-4構造量はともに高くなることがわかった。このように、草本や葉においてはKlason法によるリグニン定量値が誤りである、と言うことを前提として解析すれば、草本・葉と二次木部との細胞壁の違いは、リグニン量・エリトロ型β-O-4構造量の差である、と考えることが可能であることが示された。
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