2006 Fiscal Year Annual Research Report
渡り鳥の飛来によるため池水質汚染に対する水質浄化策の確立
Project/Area Number |
18658087
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
梶原 晶彦 山形大学, 農学部, 助手 (60291283)
|
Keywords | ため池 / 富栄養化 / 渡り鳥 / 窒素 / 浄化 / スイレン |
Research Abstract |
本研究では、渡り鳥の飛来数増加による農業用ため池の水質汚染の現状把握および浄化策の確立を目的とし、山形県鶴岡市の大山下池を対象地として、水質通年調査の実施および室内実験により水生植物の水質浄化能の定量化を試みた。分析した主な水質項目は、陽イオン5種、陰イオン7種、全窒素、全有機炭素、SSであり、浄化実験ではため池底土の強熱減量を項目に加えた。 水質通年調査は2006年4月〜12月にかけて実施した。全窒素濃度では、灌漑期前の4月〜5月では表層、低層ともに0.5〜1.0mg/lと比較的高濃度であったが、ため池内にヒシ類、スイレンが大量に発生する7月〜8月には表層で約0.3mg/l、低層で約0.1mg/lへと低下した。これは植物による吸収と低層部の貧酸素化に伴う脱窒の進行によるものである。カモ・白鳥などの渡り鳥が飛来する10月〜12月にかけては全窒素濃度は1.5〜2.0mg/lへと急上昇した。特に渡り鳥の飛来数(最大約4万羽)とアンモニア態窒素濃度(最大2.5mg/l)の相関が高かったことから、鳥の糞尿により過剰な窒素の供給が起こっていることが明らかとなった。 水生植物による浄化能の実験は、大山下池に自生するスイレン類を対象植物として、池の3箇所より直接採取した底土と流入水を用い、20℃に調整された恒温室内で2ヶ月間行った。実験開始後に全窒素のみかけの浄化速度は緩やかに上昇し、植物量が最大となった1ヵ月後に浄化速度も最大値約0.6/m^2/dayとなった。その後枯死するまでの期間は緩やかに減少したが、期間平均のみかけの浄化速度は0.06〜0.39g/m^2/dayとなり、これはハス類の0.45g/m^2/dayとほぼ同程度の浄化能であることが明らかとなった。ただし、浄化能は低土質によって大きく異なっていたため現地に植栽する際には場所の選定が重要となる。
|