2006 Fiscal Year Annual Research Report
猫伝染性腹膜炎のウイルスレセプターを標的とした新規治療法の開発
Project/Area Number |
18658127
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
遠藤 泰之 鹿児島大学, 農学部, 助教授 (90332600)
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Keywords | 猫伝染性腹膜炎 / レセプター / 治療 |
Research Abstract |
猫コロナウイルス(FCoV)には、猫伝染性腹膜炎(FIP)を引き起こすFIPウイルス(FIPV)と、ごく軽度の腸炎しか起こさない猫腸内コロナウイルス(FECV)がある。しかしFCoV感染症に対する治療法は確立されていない。近年FCoVのレセプターが、C末端を細胞外領域とする膜貫通型のエキソ型酵素であるアミノペプチターゼN(APN)であることが明らかにされたことから、APN阻害剤であるウベニメクスに着目し、FCoVのウイルスレセプターを標的とした抗ウイルス療法を確立する目的で基礎的検討を行った。 fcwf-4細胞の培養上清中に0.2、2,0、20、200μg/mlの濃度でウベニメクスを加え、8日間、37℃、5%CO2存在下で培養した後、細胞生存率を計測したが、いずれの濃度のウベニメクス存在下でも、fcwf-4細胞は90%以上の高い生存率を示したことから、細胞毒性は極めて低いことが判明した。次にウベニメクスのウイルス増殖抑制効果を検討した。0.2、2.0、20、200μg/mlのウベニメクス存在下、あるいは非存在下のfcwf-4細胞に、I型FIPVのUCD-1株、あるいはII型FIPVの79-1146株を接種し7日間培養し、細胞傷害効果の発現を指標にウイルス増殖力価を算出した。その結果、I型FIPVを接種した細胞ではウイルス増殖の抑制は認められなかったが、II型FIPVを接種した細胞においては、ウベニメクスの濃度依存性にウイルス増殖抑制効果が観察された。本研究成果については現在論文執筆中である。 このようにウベニメクスがII型FIPVの増殖を抑制したことから、FIP発症予防薬あるいは治療薬となりうる可能性が示された。今後はこのウベニメクスのin vitroにおけるウイルス増殖抑制機序の詳細な解析、細胞表面APN発現量に与える影響、ならびにin vitroにおける毒性やウイルス増殖抑制効果について検討する予定である。
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Research Products
(1 results)