2006 Fiscal Year Annual Research Report
可溶性タンパク質を形質膜貫通タンパク質へ変換する新しい分子マシーナリーの開発
Project/Area Number |
18658138
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊東 信 九州大学, 大学院農学研究院, 教授 (40253512)
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Keywords | ムチンボックス / 形質膜II型タンパク質 / 中性セラミダーゼ / O型糖鎖 / スフィンゴ脂質代謝酵素 / スフィンゴ脂質セラミドN-デアシラーゼ / 細胞内トラフィッキング / スフィンゴミエリナーゼ |
Research Abstract |
我々は、細菌からヒトに至る中性セラミダーゼをクローニングし、それらの諸性質を明らかにしてきた。その研究過程で、細菌、ショウジョウバエ、細胞性粘菌の中性セラミダーゼは分泌タンパク質であり、ゼブラフイッシュ、マウス、ラット及びヒトの本酵素は形質膜II型タンパク質(N-末端を細胞質内に有し、触媒部位およびC-末端を細胞外に持つ)であることを見いだした。詳細にそれらの一次構造を比較した結果、脊椎動物由来の本酵素はN-末端のシグナル配列の直後にセリン、トレオニン、プロリンに富んだ領域(ムチンボックスと呼称)を持つことが判明した。本研究では、この領域が可溶性の分泌タンパク質を形質膜タンパク質に変換する機能を持つと推測し、実験を進めた。先ず、PNAレクチンを用いてムチンボックスに糖鎖が結合していうかどうかを調べたところ、ムチンボックスを持つ野生型は強く染色されたが、ムチンボックスを削除した変異体セラミダーゼは全く染色されなかった。次に、野生型セラミダーゼと変異体セラミダーゼをHEK293細胞に発現させたところ、予想通り野生型酵素は形質膜上に発現していたが、ムチンボックスを欠損した変異型酵素は発現していないことがFACS解析によって明らかになった。一方、変異体酵素は培地中に大量に分泌されていた。次に、ムチンボックスとシグナル配列をGFPのN-末に結合させたムチンボックス融合GFPタンパク質のコンストラクトを作製し、HEK細胞で発現させた。その結果、この融合GFPタンパク質は形質膜表層に発現することが明らかになった。これらの実験結果は、ムチンボックスがGFPのような可溶性タンパク質を形質膜II型タンパク質に変換するための必要十分条件であることを意味している。そこで、当研究室で既に単離されている細菌由来のスフィンゴ脂質代謝酵素(スフィンゴミエリナーゼおよびスフィンゴ脂質セラミドN-デアシラーゼ)のN-末端にシグナル配列とムチンボックスを融合させたコンストラクトを作製し、CHOP細胞、HEK細胞にリポフェクション法によって導入した。その結果、これらの可溶性酵素は形質膜II型酵素として発現していることが、抗体を用いた実験で明らかになった。さらに、これらの酵素は形質膜結合型になっても十分な活性を維持していることが確認された。
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