2006 Fiscal Year Annual Research Report
二本鎖脂質分子の膜内での化学合成によって誘起される膜の形態変化に関する研究
Project/Area Number |
18659006
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
国嶋 崇隆 神戸学院大学, 薬学部, 助教授 (10214975)
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Keywords | 膜融合 / セラミド / 脱水縮合 / スフィンゴシン / リポソーム / 脂質合成 |
Research Abstract |
膜融合と言う基本的な生命現象を,酵素や融合タンパクなどの生体由来物質を一切使用せず,完全な化学反応だけで引き起こすことを計画実施した.開発を目指すシステムは,融合の分子機構解明,新しい薬物送達システムの構築などに役立つ技術を提供するものと期待できる. 今年度は以下のような成果をあげ,J.Am.Chem.Soc.誌に受理掲載された. (1)レシチン,脂肪酸,スフィンゴシンまたは関連誘導体,両親媒性3級アミン触媒を含むSUV(二分子膜からなる小さな一枚膜小胞)に脱水縮合剤前駆体であるCDMT(クロロジメトキシトリアジン)を作用させると,二分子膜界面に特異的に発生する脱水縮合剤によって脂肪酸とスフィンゴシン類との脱水縮合反応が進行し,セラミド類が高収率に生成することを示した. (2)上記(1)によるセラミド生成の結果,膜融合が進行することを明らかにするとともに次のような知見を得た. (i)高濃度条件下における膜融合によって,室温数時間で数百個のSUV(粒径50nm前後)が融合を繰り返し,最終的に1μmを超す巨大リポソーム(GUV)へと変化した. (ii)縮合反応収率と融合率の間に明確な相関性があることを明らかにし,縮合反応が膜融合の引き金となることを示した. (iii)用いる脂肪酸や3級アミン触媒の脂溶性と縮合反応収率の間に相関性があり,二分子膜への分布率の高い(つまり脂溶性の高い)基質や触媒を用いた場合に収率が向上することが分かった. (iv)融合現象は,蛍光プローブを用いたエネルギー転移,粒径変化,および透過型電子顕微鏡によって確認した.
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