2006 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍効果に及ぼす腫瘍組織中トランスポーター発現の日周リズム
Project/Area Number |
18659041
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
樋口 駿 九州大学, 大学院薬学研究院, 教授 (40218699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家入 一郎 九州大学, 大学院薬学研究院, 助教授 (60253473)
藤 秀人 長崎大学, 医学部, 講師 (90346809)
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Keywords | chronopharmacology / mdr1 / mrp2 / bcrp / antitumor effect / adriamycin |
Research Abstract |
本研究では、P-glycoprotein(P-gp)の基質薬剤であるadriamycin(ADR)を対象に、抗腫瘍効果に及ぼす投薬時刻の影響を評価した。また、その要因として血漿中及び腫瘍組織中ADR濃度および5種の薬物トランスポーターのmRNA発現の影響について評価した。腫瘍にはP-gp発現が報告されているEhrlich ascites tumor cells(EAC)を用いて、ICRマウスにEACを皮下移植し、明期前半の10:00もしくは暗期前半の22:00にADRを尾静脈より投薬した。その結果、22:00投薬群はControl群と比較し腫瘍増殖を約3倍抑制した。また、10:00投薬群と比較し22:00投薬群で腫瘍増殖抑制効果が有意に向上した。以上より、投薬時刻の違いによって抗腫瘍効果が変化することが明らかとなった。そこで、血中・腫瘍組織中ADR濃度および腫瘍組織中薬物トランスポーターmRNA発現量を測定した。ADR投薬後48時間、経時的に血中および組織中ADR濃度を測定したが、投薬時刻の違いによる有意な差は認められなかった。同様に、腫瘍組織中mdr1a, mdr1b, mrp1, mrp2, bcrpのmRNA発現量を測定したが、いずれも明確な日内変動は認められなかった。また、腫瘍組織中薬物トランスポーターmRNA発現量には投薬後の薬物トランスポーターmRNA発現量は、いずれも腫瘍組織中ADR濃度との相関関係が認められなかった。以上のことからADR抗腫瘍効果に対する投薬時刻の影響として、薬物動態学的な関与の可能性は低いと考えられた。 今後、ADRの投薬時刻の違いによる抗腫瘍効果に差異が現れた機序について、アポトーシスの指標であるCaspase-3活性やADRの標的酵素であるTopoisomerase-IIなどについて評価する。
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