2006 Fiscal Year Annual Research Report
滑膜肉腫を用いた神経堤幹細胞の分化方向決定機構の解明
Project/Area Number |
18659052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸口田 淳也 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40273502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 朋樹 京都大学, 再生医科学研究所, 助手 (90378886)
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Keywords | 滑膜肉腫 / 神経堤 / 癌幹細胞 / 多分化能 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
滑膜肉腫切除組織13例及び培養細胞5株を用いた解析により以下の成果を得た。 1)分化関連遺伝子の発現:特定の組織の分化形質に関連した遺伝子の発現をRT-PCR法により解析した。その結果、骨3/5例、軟骨4/5例、ニューロン5/5例、グリア3/5例、メラノサイト5/5例で何らかの関連遺伝子の発現が確認された。一方、脂肪及び血管内皮関連遺伝子の発現は確認されなかった。これらの遺伝子の発現は、切除組織を用いた解析においても確認できた。 2)分化関連表現型の解析:同様に各組織細胞としての分化能に関連する表現型を解析した結果、骨1/5例、軟骨4/5例、ニューロン5/5例で陽性であった。脂肪及び血管内皮関連分化形質は確認されなかった。 3)初代培養滑膜肉腫細胞を用いて、同様な実験を行い、細胞株と同様に骨、軟骨、ニューロン、グリアの分化形質を誘導することが確認された。 4)神経系への分化形質をもつことから、誘導因子による増殖抑制効果を検討した。まずATRAによる処理では、5例全例において繊維肉腫あるいは大腸癌では抑制効果が認められない濃度において著しい抑制効果が検出された。造腫瘍能を有する1株を対象としたin vivoの実験においても、増殖抑制効果が認められた。またFGF2により分化誘導では、1/5例において、著明な抑制効果が示され、細胞にはアポトーシスが誘導された。FGF2により増殖が抑制された細胞株はin vivoにおいて明らかなnuclear palisadingを示す腫瘍を形成し、グリアとの強い関連性を示唆する結果が得られた。 以上の結果より、滑膜肉腫が神経堤幹細胞に準じた多分化能を有することが判明し、特に神経分化能は、分化誘導療法の対象となりうるものであることを示唆する結果が得られた。
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Research Products
(4 results)