2006 Fiscal Year Annual Research Report
三酸化砒素のDNA損傷応答・アポトーシス誘導へ与える影響の分子機構解析
Project/Area Number |
18659087
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
南 康博 神戸大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70229772)
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Keywords | 急性前骨髄球性白血病 / 三酸化砒素 / Chk2キナーゼ / Wip1ホスファターゼ / DNA損傷応答 / アポトーシス / 細胞周期チェックポイント制御 / タンパク質脱リン酸化 |
Research Abstract |
三酸化砒素(商品名:トリセノックス)は、オールトランスレチノイン酸(ATRA)耐性の急性前骨髄球性白血病(APL)に対して適応されているが、その作用機序については不明な点が多い。本研究では、NB4細胞(PML・RARα遺伝子の転座が認められるAPL細胞)、MCF7細胞、293T細胞を用いて、三酸化砒素がDNA損傷応答、アポトーシス誘導等に与える影響を検討した。その結果、三酸化砒素処理によりNB4細胞等においてChk2キナーゼおよびp38MAPキナーゼのリン酸化・活性化ならびにアポトーシスの亢進が三酸化砒素の濃度依存的に観察されたが、関連分子である五酸化砒素ではこれらのキナーゼやアポトーシスには影響を与えなかった。また、三酸化砒素によるアポトーシスは、Chk2遺伝子のノックダウンやp38MAPキナーゼ阻害剤によって抑制されることから、三酸化砒素によるアポトーシスにおいてはChk2、p38MAPキナーゼの活性化が重要な役割を担うことが明らかとなった。さらに、三酸化砒素はリン酸化・活性化されたChk2キナーゼやp38MAPキナーゼを脱リン酸化・不活化する核内ホスファターゼを直接に不活化することにより、これらのキナーゼのリン酸化・活性化をさらに亢進させることが見い出された。三酸化砒素によるChk2キナーゼ、p38MAPキナーゼの活性化が直接的作用によるか否かについては未だ不明であるが、平成18年度の研究により、DNA損傷応答、特に細胞周期チェックポイント機構が三酸化砒素のターゲットとなることが示された。
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