Research Abstract |
本年度は,当初予定のエストロゲン様作用を有する化学物質としてビスフェノールA(BPA)を用い, In vivoにおける量-反応関係を検討した.C57BL/6Jマウスを妊娠8日で購入,妊娠10日からBPAを飲料水に添加して曝露を開始した.既存文献の中でも比較的低用量の報告を参考に,量は,0.005〜5.0mg/Lまで(対照群を含めて)5段階を設けた.分娩は通常におこなわせ,特にculminationは行なわず,分娩後も同じ濃度で曝露を継続,新生仔が出生12日(PND12)に達した時点で麻酔下に解剖して,組織のサンプリングを行なった,母体脳(大脳・小脳・その他の部位に3分割).新生仔の雌雄それぞれ2匹ずつを選び,脳を摘出,冷凍保存した.この曝露において,各群n=4としたが,仔を出産しなかった個体が,5,0.5mg/L群の中に,それぞれ1,2個体あった.さらに,5,0.05,0.005の各群それぞれ1母体では,出生時における仔の一部の死亡が観察された.対照群にはこのような事象は観察されなかった.生後12日目(解剖時)まで仔の数はほとんど変化しなかったが,12日の時点での平均litter sizeは,対照群から順に,8.3,7.0,7.5,3.3,5.5であって,高用量2段階が胎仔毒性を有するのは明らかであり,以降の実験は0.05mg/Lの用量で実施すべきことが示唆された.現在,採取組織をDNAマイクロアレイにより,RNAの発現量を探索的(マウス用搭載数5,000のチップを使用)に検討中である. なお,年度当初に分担者2名の異動があったこと,研究代表者の実験室でも大型機器を導入したことなので,実験は当初の予定より遅れることとなったが,次年度(最終年度)は当初予定へのキャッチアップを目指して計画を実施する予定である.
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