2006 Fiscal Year Annual Research Report
法医公衆衛生学の構築ー根拠に基づく医療福祉政策立案の新しい方法論
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18659180
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田宮 菜奈子 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 教授 (20236748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮石 智 岡山大学, 大学院医歯薬学研究科, 助教授 (90239343)
山本 秀樹 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 助教授 (50243457)
松澤 明美 茨城キリスト教大学, 看護学部, 助手 (20382822)
本澤 巳代子 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 教授 (70200342)
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Keywords | 法医学 / 公衆衛生学 / 剖検 / 虐待 / 家族背景 |
Research Abstract |
本研究は、わが国の剖検例における社会医学的分析を通して、高齢者・小児虐待、高齢者孤独死等の諸問題に取り組み、改善策提言を行うものである。具体的目的としては1.既存の剖検記録による上記事例の分析を通した実態及び背景要因の明確化、2.1に基づく均一化したフォームによるprospectiveなデータの蓄積と解析3.これらに基づく具体的な改善策の提言である。 今年度の成果としては、まず高齢者虐待について既存データを分析し、背景要因を明らかにした。高齢者虐待の実態では、虐待の究極形ともいえる家族内殺人の事例が含まれ、背景要因では、息子、精神疾患をもつ家族との同居が考えられた。また、虐待が疑われた事例では、高齢者本人の障害が背景要因と考えられ、この点は先行研究とも一致していた。さらに、司法・行政解剖事例ともに、同居家族が無職、家から出ない、近所付き合いがない事例が含まれ、社会からの孤立化の可能性が考えられた。この結果は既に国内学会(日本公衆衛生学会2006)で発表し、今年度のドイツ法医学会でも発表の予定である。さらに論文化に向けて進めていく。 さらに上述の結果に基づき、必要なデータが均一に入手可能な統一の情報収集フォームを完成させた。過去の剖検記録には家族介護者の性別・年齢・健康状態・仕事の有無・職種・生活状況、家族構成・世帯の経済状況、生活保護・介護保険サービス等の各種サービス等、背景要因の明確化のために重要な情報が含まれていないことが多かった。そのため、これらの情報の項目を含んだ統一したフォームを検討の上、作成した。既に、本フォームによるprospective調査を開始し、データを蓄積している。次年度はこのデータベースを基に、高齢者虐待に加えて、小児虐待等の社会的諸問題にも焦点をあて、記述疫学的に、どのようなケースがどのような背景でどの程度生じているかを明らかにし、さらに経年変化をも分析した上で、具体的改善策の検討へ繋げていく予定である。
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