2007 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージから分泌され強力な炎症惹起作用を有する新規蛋白の作用機構の解明
Project/Area Number |
18659267
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 静也 Osaka University, 医学系研究科, 准教授 (60243242)
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Keywords | マクロファージ / HDL / Proepithelin / 動脈硬化 / 動脈硬化 / TNFα |
Research Abstract |
私共はHDLが有する抗炎症作用の機序に関して検討し。健常人末梢血単球を単離・培養後、単球由来マクロファージ(MΦ)に分化させた。このMΦでは炎症性サイトカインTNFαやMMP-9のmRNA発現、蛋白の分泌が培養に伴って増加するが、MΦをHDLと培養すると、TNFαやMMP-9mRNAの発現が著減したが、MΦのHDL受容体であるモエシン様HDL結合蛋白を中和抗体で阻害しても、それらの減少に変化を認めなかった。従って、HDLがMΦの産生する未知のサイトカインと結合し、中和する可能性を考えた。そこで、MΦの培養上清より、アポA-Iと結合する約88kDaの蛋白を精製し、その内部アミノ酸配列を決定した結果、炎症性サイトカインであるプロエピテリン(PEPI)と同一であった。ヒトPEPI遺伝子をクローニングし、CHO細胞でPEPIを発現させて精製した。また、それぞれの精製物をマウス及びウサギに免疫し、モノクロ及びポリクロ抗体を得、ELISAを確立した。ヒトの健常人血清・尿の検討では、CVも5%未満と良好なアッセイであることを確認している。一方、PEPIはHDL及びアポA-Iと結合することも確認しているが、MΦにおけるPEPIの産生は分化に伴って増加し、PEPIが大動脈、冠動脈の動脈硬化巣のshoulder部分の泡沫化MΦに存在することを組織学的に確認した。MΦが産生するサイトカインはautocrine的に作用する事が多いことから、PEPIのMΦに対する効果とHDLによる干渉を検討したところ、PEPIがMφのTNFα、IL-1β、MMP-9mRNA発現を約80倍、8倍、3倍に増強し、蛋白発現、分泌も同様に著増させ、強い炎症惹起作用を有することが解明された。このPEPIによるMφのTNFα・IL-1β・MMP-9の発現増強作用は、HDLまたはアポA-Iの存在下で完全に抑制され、その抑制作用はHDL/apoA-IがPEP1と結合することで観察された。また、MφのTNFα、IL-1β、MMP-9mRNA発現はPEPI抗体により抑制され、HDLの抗炎症作用はHDLがMφから分泌されるPEPIとの結合を介して起こると考えられた。
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