2006 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝細胞癌悪性化に関わる膜脂質変換酵素DGKθの研究
Project/Area Number |
18659386
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武冨 紹信 九州大学, 大学病院, 助手 (70363364)
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Keywords | ジアシルグリセロールキナーゼ / 肝細胞癌 / C型肝炎ウイルス |
Research Abstract |
(1)肝細胞癌切除症列における免疫組織学的および分子生物学的検討 DGKθは1997年に脳組織に高発現するタンパク質としてクローニングされ、他のDGKアイソザイムと違って、SHドメインやRasassociating domainを含み、肝組織で高発現している。DGKθは活性化型RhoAと結合する事によりその機能がネガティブに制御されている事が報告されている。さらに、DGKθはノルアドレナリン刺激によりPI3キナーゼ依存性に核から細胞膜に移動することが報告された。「HCVを原因とする肝発癌過程にDGKθはPI3キナーゼおよびPKC等のシグナル伝達因子を制御する事により関与している」という仮説を証明するため、まず、臨床的にDGKθ発現と肝細胞癌との関連性を確認するため、肝細胞癌切除症例を対象にRT-PCR法(19例)および抗DGKθ抗体を用いた免疫組織染色(58例)を行った。さらに臨床病理学的因子との比較検討を行った。(1)非癌部及び癌部組織から抽出したtotal RNAを使用してRT-PCRを行ったところ、12例(63%)の症例で癌部においてDGKθ mRNAの発現が低下していた。(2)免疫組織学的検討においても39例(67%)の症例で癌部における染色性が低下していた。一方、非癌部では全例において肝細胞での発現を認めた。(3)免疫組織染色にて非癌部と同等の発現を認めた発現群(n=19)と非癌部より発現が低下していた低下群(n=39)との2群間で臨床病理学的因子の比較検討を行ったところ、血清アルブミン(g/dl),3.8:3.8(発現群:低下群);AST(IU/L),64:61;総ビリルビン(mg/dl),0.77:0.84;ICG15分値(%),17.4:17.3等の肝機能には両群間に有意差は認められなかった。腫瘍因子では腫瘍径(cm),4.8:3.6;fc(+),84%:90%;im(+),32%:21%;vp(+),47%:41%;w(+),16%:5%と有意差は認めなかったものの、Edmondson分類III+IV型,47%:74%とDGKθ発現低下群で有意に分化度が低かった(p<0.05)。なお、生存率及び無再発生存率には両群間に有意差を認めなかった。肝癌組織分化度の低下とともにDGKθの発現が低下していたことから、肝癌細胞の脱分化にDGKθ発現低下が関与している可能性が示唆された。 (2)DGKθとHCV-NS5Aタンパク質およびPI3キナーゼの結合能の検討 HepG2およびHuH7肝癌細胞株を使用し、細胞内におけるDGKθとHCV-NS5AおよびPI3キナーゼp85αとの結合を免疫沈降反応にて検討し、これらのタンパク質との結合部位を検討するため、機能ドメイン毎のDGKθおよびcystein-rich領域に変異を挿入したDGKθをコードするプラスミドを作成した。
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