2008 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類脳梗塞モデルを用いた脳梗塞関連たんぱく質の網羅的解析
Project/Area Number |
18659415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱崎 裕子 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究研究科, 特任研究員 (10422370)
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Keywords | 脳神経疾患 / プロテオーム |
Research Abstract |
近い将来、超高齢化社会を迎えるわが国において、加齢性に増加する脳血管障害に対する治療法の確立は急務である。脳梗塞のモデル動物を用いた研究において、げっ歯類とヒトを含む霊長類では、脳梗塞巣に対する反応が異なるため、ヒトヘの応用を考える場合、霊長類でのモデル動物の作成、さらには、その霊長類脳梗塞モデルを用いたトランスレーショナルリサーチが必須である。 そこで、カニクイザル脳梗塞モデルを用いて、脳梗塞発症後の発現たんぱく質の変動解析を網羅的に行うことにより、脳梗塞関連たんぱく質を探索し、臨床応用へのターゲットとなりうる候補たんぱく質を同定することを本研究の目的とした。 本年度は、3頭のカニクイザルに対し、過酸化ラジカルを発生する特殊な色素を利用したラクナ梗塞を作成し、梗塞作成から24時間後の脳のプロテオーム解析を行った。これまでの健常カニクイザルの脳のプロテオーム解析の結果から、白質と、灰白質とでは、たんぱく質のプロファイルが異なることから、白質と、灰白質それぞれの梗塞部位とその周辺部位を、反対側を対照として比較検討した。無ラベルで、常法に従い、LC-MSを用いたショットガン法を用いて、全体で、280のたんぱく質を同定した。これらのたんぱく質の発現を解析することにより、白質、灰白質に特徴的なたんぱく質、梗塞部位のみ、あるいは、梗塞部周辺にのみ発現が確認できるたんぱく質、梗塞部で発現が上昇、あるいは、減少しているたんぱく質など、複数の脳梗塞関連たんぱく質を同定した。 ラクナ梗塞は、非常に小さい脳梗塞で、無症状のことも多く、早期に発見、治療することがとても重要である。今回の研究により得られた脳梗塞時の変動たんぱく質は、脳梗塞の臨床ターゲットとなりうるたんぱく質である。また、ラベルなしでも相対定量比較が可能な系が確立できたことは、今後の臨床プロテオミクスに応用可能である。
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