2006 Fiscal Year Annual Research Report
心臓外科手術後患者の身体感覚とボディイメージに焦点化した看護介入の開発とその評価
Project/Area Number |
18659660
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤崎 郁 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (30285358)
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Keywords | 医療・福祉 / 看護学 / 臨床 / ボディイメージ / 身体感覚 / 周手術期看護 / 術後リハビリテーション / 心臓外科手術 |
Research Abstract |
本研究の目的は、臓外科手術を受ける患者の身体感覚とボディイメージに焦点化した看護問題を明らかにし、それに対するケアの可能性について検討することである。初年度である平成18年度は、過去に心臓外科手術を受けた8名の患者に対してin-depth interviewを実施し、彼らの主観的経験に関する聞き取り調査を行った。 その結果、過去(手術から闘病当時)から現在(インタビュー時)まで、医療者にはその存在を認知されておらず、ほとんどケアがなされていない苦しみや不安があることが確認された。不安の最も大きなものは「死への不安」であり、苦しみのもっとも大きなものは息苦しさや創の痛みなどの「身体症状」であった。これらのものは、医療者にとっても周知の事項ばかりであったが、患者自身へのダメージや生活上の支障・影響という点では、我々医療者が認識しているよりも格段に深刻で長期化する問題であり、本人や家族にとっては耐え難いものとして経験されていることがわかった。 また、心臓外科手術の技術的革新にともない、手術による患者の身体への侵襲は小さくなり疾病コントロールは容易になったとされているにもかかわらず、「心臓」というシンボリックな臓器のもつ意味づけの特殊性は不変のものであり、それを手術する患者の術前・術後の心理的葛藤やボディイメージ上の混乱は、相変わらず非常に大きいことも確認された。むしろ、心臓カテーテルやカテーテルインターベンションなどの観血的治療法の開発により、心臓の治療を受ける患者の身体的苦痛や心理的負担はより甚大なものとなっていることすら示唆された。 今年度に8名の患者のインタビューから得られた記述データは膨大であり、来年度はその詳細な分析を行って成果を発表するとともに、インタビューの対象者数を増やして、できるだけ広い角度からの知見を収集して介入プログラム開発の基盤とする予定である。
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