Research Abstract |
本研究の目的は,ヒトの情報処理メカニズムを解明し,ヒトの心理・生理反応に立脚した環境評価方法を確立することである.今年度は以下の二点に関して検討を行った. 1.音圧レベルと周波数に関連する聴覚誘発脳磁界反応 心理的な音の大きさ(ラウドネス)に重要な音圧レベルと周波数が,ヒトの聴覚野でどのように処理されるか,聴覚誘発脳磁界反応により調べた.周波数250,500,1000,2000,4000,8000Hzの音それぞれについて,音圧レベルを30,40,50,60,70dBに変化させ,脳磁界反応を記録した.解析の結果,どの周波数においても,音圧レベルの増加に伴い,脳磁界活動強度も増加するが,その増加率が,1000Hz以下と2000Hz以上で大きく異なることが分かった.これは,1000-2000Hz前後で,音の大きさの処理メカニズムが聴覚野で異なっていることを示唆している. 2.鉄道車内・駅構内騒音評価 鉄道車内については,通勤・通学の手段として鉄道は多くの人々が利用しており利用時間も長い.また,鉄道車内・駅構内における騒音暴露による聴力低下や,車内放送の聴き取りにくさ・不快感が指摘されている.しかしながら,鉄道車内・駅構内音環境について,改善の指針となる基礎的データが存在しないことから,12鉄道会社36路線で調査を行った.ダミーヘッドマイクロフォンまたはバイノーラルマイクロフォンにより騒音測定を行った.鉄道車内騒音については,地下鉄道が地上鉄道より3-5dB騒音レベルが大きかった.駅構内については,地下が地上より4-7dB,島式が相対式より約3dB騒音レベルが大きかった.
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