2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18680029
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小村 豊 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 脳神経情報研究部門, 主任研究員 (80357029)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
我々、霊長類が、視界を効率的に探索しているときの脳内の計算機構を明らかにすべく、大脳皮質と相互連絡のある視床枕に注目して、実験を進めた。視覚刺激としては、競合する特徴を並存させたランダムドットを用いて、ある一つの特徴を探索させる条件と、探索を不要とする条件を混合させた行動課題を用いた。行動成績のなかでも、サルの眼球運動や反応時間から、探索条件と非探索条件で、サルが、実際に、視界を能動的に判断しているか、受動的に見ているだけなのかが、区別された。さらに、上記の行動課題を遂行しているときに、視床枕から、単一ニューロン活動を多数記録した。その結果、視床枕ニューロンは、1)視覚刺激呈示より前から応答するもの、2)視覚刺激呈示期間に応答するもの、3)遅延期間に応答するもの、4)行動直前に応答するもの、5)行動の後に応答するもの、6)これら複数の期間にまたがって応答するもの、と応答様式が多彩であった。今回、1)または2)に応答するニューロン群の応答パターンを解析した。まず、視覚刺激呈示期より以前から応答するニューロン群は、トライアル初期から、探索すべき視覚刺激が呈示される時点に向かって、徐々に活動を上昇させる傾向があった。この傾向は、非探索条件時には、減少した。以上から、これらの活動には、視界を探索する前の構えが反映されていることが推察された。次に、視覚刺激呈示期間に応答するものは、呈示直後、一過性に応答する成分と、その後も持続的に応答する成分に分かれた。一過性の応答成分初期では、探索条件と非探索条件は、分別されなかったが、持続性応答成分にかけて、次第に、両条件は分別されていった。以上から、これらの応答は、ボトムアップ性に生起された視覚応答から、探索時に駆動されるトップダウン信号へ、変換されていく過程が、反映されていることが、推察された。
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