2006 Fiscal Year Annual Research Report
レンチウイルスベクターを用いた新しい遺伝子機能解析システムの構築とその応用
Project/Area Number |
18680036
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊川 正人 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (20304066)
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Keywords | レンチウイルス / 胎盤 / 遺伝子機能解析 / トランスジェニック |
Research Abstract |
長期で安定した遺伝子発現を期待する場合には、外来遺伝子を宿主ゲノムに組み込むことのできるレトロウイルスベクターが広く用いられている。しかしゲノムに組み込まれたレトロウイルスベクターは、特に個体レベルで用いられた場合には、種々のメカニズムにより遺伝子発現が抑制されやすい欠点を有する。レンチウイルスベクターはHuman Immunodeficiency Virus(HIV)由来のレトロウイルスベクターの一つであるが、特筆すべき利点として、非分裂期にある細胞にも効率良く感染できる特徴や、遺伝子発現が抑制されにくい特徴を併せ持つ。本研究では、動物個体レベルで遺伝子機能を解析するツールとして、レンチウイルスベクターの有用性について検討を行った。 これまでに受精卵にレンチウイルスベクターを感染させると効率良くトランスジェニックマウスが作製できることを報告しているが、今年度は、胚盤胞では将来胎児となる内部細胞塊(ICM)を将来胎盤となる栄養膜(TE)が覆うようになることに着目し、胚盤胞への感染と移植を試みた。その結果、胚盤胞での感染では、TE特異的な遺伝子導入が見られ、またその胚を移植すると、胎盤特異的な遺伝子発現が観察された。さらに胎盤の機能不全により胚性致死となるets2やerk2,p38alphaのノックアウトマウスの胚盤胞に欠損遺伝子を導入することで、胎盤異常が改善されると共に新生児を得ることにも成功した。この際、胎児には全く遺伝子導入されていなかった。上記のように、レンチウイルスベクターを胚盤胞に感染させることで胎盤特異的な遺伝子導入システムの開発に成功した。
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