2006 Fiscal Year Annual Research Report
出土木製品保存処理に使用されるPEGの分子量分布変動と処理後に与える影響
Project/Area Number |
18680053
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
米村 祥央 東北芸術工科大学, 芸術学部, 講師 (50332458)
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Keywords | PEG / 出土木製品 / 保存処理 / 分子量分布 / 低分子化 / 保存処理後の環境 |
Research Abstract |
研究初年度である平成18年度は、PEGの低分子化メカニズムの詳細に関する研究を進めた。一般的な出土木製品の保存処理では、PEG水溶液の濃度を約20%から約100%まで、長時間かけて上昇させていく。よって、実際の処理工程におけるPEG濃度と分子量分布の変動の関係を検討するため、異なる濃度のPEGについて、低分子化の促進試験をおこなった。ただし、温度は変化を促進させるために、実際の工程よりも高い、80℃に設定した。 また、保存処理後の木製品に含浸されたPEGが、展示・保管環境によって受ける影響を明らかにするため、紫外線を連続的に照射する実験をおこなった。 PEG分子量分布の変動速度は、水溶液の濃度が低くなるにっれ大きくなった。また分子:量分布は、平均分子量が低分子側にシフトすると共に分散度が大きくなり、低分子側にブロードな分子:量分布となった。よって、研究代表者の先行研究を加えて考察すると、温度を必要以上の高温に設定したり、酸素が多く取り込まれるような激しい撹搾をすることは、PEG濃度が低い、保存処理の初期の段階では特に注意が必要である。 紫外線照射の実験ではPEGの高分子化が起こった。これに伴って、保存処理した出土木製品の表面は、やや銀灰色となった。高分子化したPEGは水溶性が著しく低下したため、文化財の保存処理の基本概念である、可逆性や再溶解性を検討する上で問題となるものである。ただし、材料として、安定化する可能性もあるので、今後も研究を要する。 平成19年度は保存処理工程におけるPEGの低分子化の詳細、保存処理後の環境における低分子化についてさらに検討していく予定である。
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