2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18680054
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小口 千明 Saitama University, 地圏科学研究センター, 准教授 (20312803)
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Keywords | 岩石 / 土壌 / 塩溶液 / 硫酸塩 / 毛管現象 / 岩石物性 / 塩類析出 / 塩類風化 |
Research Abstract |
地圏材料における塩類析出から塩類風化にいたる一連の現象を体系化し、種々の塩害対策を講じる際に必要な基礎情報の提供を目的として研究を行った。平成19年度の研究からは、以下の知見を得た。 (1)野外調査:主に野外調査と各種物性試験を中心として研究を行った。海外での野外調査では、フランスにおける世界遺産遺跡であるストラスブールおよびランスの石造建築物に析出している塩類を採取し、その特性を把握した。ストラスブールでは硝酸塩が多く、ランスでは硫酸塩が多く見られた。ストラスブールでは河畔が近いことから、水質汚染による硝酸塩の寄与が考えられる。国内の調査では、埼玉県の吉見百穴遺跡を選定し、定時観測を開始した。その結果、主としてアルミニウムおよび鉄の硫酸塩の析出が顕著であり、遺跡の構成母材そのものも風化させていることが確認できた。 (2)風化実験:上記の調査地域で見られる岩石は、ストラスブールは砂岩、ランスでは石灰岩、吉見百穴では凝灰岩である。そこで、これらの塩類風化特性を知るために、これらと同種の岩石も含めた風化実験を行った。まず、硫酸塩および炭酸塩の塩類溶液4種を準備し成形した8種の岩石試料を浸積-乾燥を繰り返す実験を行った。この結果から、一般には風化に最も甚大な影響を与えると認識されている硫酸ナトリウム(鉱物名:テナルダイト,Na_2SO_4)が、必ずしも全ての岩型に対して影響を与えるとは限らないことが判明した。また、モルタルと海水を反応させる実験においては、アラゴナイト(CaCO_3)とブルーサイト(Mg(OH)_2)の生成順序に関する知見を得た。現在、これらの知見を総合し、投稿論文として準備中である。
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