2007 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質の神経前駆細胞におけるG蛋白質シグナリングの役割
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18680901
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
眞田 佳門 Osaka University, 医学系研究科, 独立准教授 (50431896)
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Keywords | 大脳新皮質 / 細胞極性 / 神経細胞移動 / LKB1 / 中心体 / 神経前駆細胞 / 軸索 / 樹状突起 |
Research Abstract |
神経細胞は高度に極性化しており、細胞骨格やオルガネラは、細胞内において一定の方向性をもって分布もしくは機能制御されている。発生期の大脳新皮質において、神経細胞は神経前駆細胞から生み出され、これら神経前駆細胞は脳室を取り囲む領域(脳室帯)に存在する。新生した神経細胞は、脳表層側へと移動し、軸索や樹状突起を形成して成熟する。神経細胞が生み出される過程、神経細胞が一定の方向に移動していく過程、さらに神経細胞から軸索・樹状突起が特定の方向に伸長する過程には、細胞の極性が重要な役割を果たすと考えられる。しかしながら、これら極性形成のメカニズムついては不明な点が多い。LKB1は種々の動物種において、細胞の極性確立に深く関与している。本研究では、大脳新皮質における神経発生・成熟過程におけるLKBIの役割を解析した。マウス胎児脳におけるLKB1の発現を調べた結果、神経発生初期(妊娠12日目)および神経発生ピーク期(妊娠14日目)において、神経前駆細胞が局在する脳室帯、移動中の細胞が局在する中間帯、および成熟中の神経細胞が存在する皮質板にLkbl遺伝子の発現が認められた。このことから、LKB1は神経発生・成熟の様々な段階に寄与していると考えられた。そこで、LKB1に対するshRNAをGFP発現ベクターと共に、妊娠14目目のマウス胎児脳に導入し、発生段階を追って、細胞の位置や局在などを解析した。その結果、LKBIは(1)移動中の神経細胞においては、進行方向への中心体の移動およびそれに伴う核移動を制御する、(2)神経細胞の成熟過程においては、脳膜側への中心体の配置およびそれに伴う樹状突起の伸長方向を決定している、ことが判明した。いずれの場合もLKB1は、中心体の局在やダイナミクスを空間的に制御することによって、神経細胞の移動および成熟に寄与すると考えられた。本研究は、LKB1が神経細胞の極性確立に必要であることを明らかにしたのと同時に、神経発生において中心体の位置制御が重要であることを示している。これらの知見は、神経系の構築メカニズムを理解するうえで極めて重要であると考えられる。
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