Research Abstract |
今年度は, ネパールヒマラヤ氷河の微生物群集の調査, および富山県立山の残雪上の微生物調査をおこない, またこれまでに得られてサンプルの分析をすすめた. 昨年度まで2年間に渡って調査を行った中国のウルムチN0.1氷河については, 今年度も調査を予定していたが, 新彊ウイグル自治区の政情不安のために今年度は調査をみあわせた. ヒマラヤの調査はその代わりに行ったものである. ヒマラヤのランラン地域のヤラ氷河の調査の結果, この氷河は過去11年間で末端位置が約200m後退していることが明らかになった. ヤラ氷河表面の微生物の分析の結果, 9種の雪氷藻類が確認された. ヤラ氷河の90年代の調査結果と比較した所, 雪氷藻類の分布に変化があることが明らかになり, これは近年十数年の氷河変動が, 微生物群集に影響を与えていることが新たに示唆された. 一方, 富山県立山での残雪上の微生物調査の結果, 藻類の繁殖は融解の激しく日射も強い初夏に最大になるわけではなく, 春から夏まで単調に増加し, 8月から9月の新雪の降る直前に最大になることが明らかになった. この季節変化の要因は, 日射や融解などの条件では単純に説明できなく, いまのところはっきりしたことはわからない. 黄砂や降雨で供給される栄養塩などが関係しているのかもしれないが, 今後これらの化学的な分析を行う必要がある. 以上, 本研究による中国, ヒマラヤの氷河, 及び立山の残雪の調査によって, それぞれの雪氷微生物群集の季節変化が定量的に明らかになった. さらに, 氷河上の微生物群集は, 年によって群集構造が変化すること, 過去数十年で氷河変動の影響により変化している可能性があることがわかった. 微生物群集の季節変化の環境要因は, 融雪や栄養塩供給が関わっている可能性が考えられたが, 今後化学的な分析などをさらに行いながら明らかにする必要がある.
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