Research Abstract |
超音波照射による廃液中重金属錯体の処理プロセスの構築を目指して, 今年度は, EDTA錯体(銅および亜鉛錯体)の超音波分解の実験を行った。さらに, 廃液から重金属を分離回収する目的で, 硫化物化による重金属回収実験を併せて行った。得られた主な知見は以下のとおりです。 1) 金属フリーEDTAおよび, 銅錯体, 亜鉛錯体の超音波照射による分解は, pHが低いほど分解速度は増加した。金属フリーEDTAと金属錯体の分解速度(減少速度)を比較した場合, フリーEDTAの方が高いことがわかった。 2) 銅錯体に硫化ナトリウム(Na_2S)を添加したところ, 添加量の増加とともに錯体濃度が減少すると同時に, 金属が沈殿物として回収された。銅錯体を処理する場合は, 1)の結果と併せて考えると, 硫化処理で銅金属沈殿物を回収した後, 金属フリーになったEDTAを超音波照射によって分解処理をした方が, 効率的に廃液を処理できることが示唆された。一方, 亜鉛錯体の場合, Na_2Sを添加しても, 沈殿物としてはわずかしか回収されず, ほとんどが亜鉛錯体として溶液中に残留した。ゆえに亜鉛錯体の場合は, 超音波処理で配位子のEDTAを分解処理した後, 硫化処理でフリーになった重金属を沈殿回収するプロセスが効率的と考えられる。さらに, 亜鉛錯体に一定流速でNa_2S水溶液を添加しながら超音波処理を試みたところ, 照射時間とともに沈殿物の増加が確認された。一方, 超音波処理のみの場合の錯体減少速度と比較したところ, 減少速度は処理時間初期時には速くなったが, 処理時間が長くなるにつれ, 減少速度の低下が認められた。これは, Na_2Sと重金属の反応に伴うEDTAのフリー化による超音波分解促進効果よりも, EDTAの分解に関与するOHラジカルがNa_2Sの存在によって失活する負の効果の方が大きいためと推察される。
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