2007 Fiscal Year Annual Research Report
高効率量子ドット量子光源の作製と空間伝送量子暗号通信への応用に関する研究
Project/Area Number |
18681025
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
熊野 英和 Hokkaido University, 電子科学研究所, 准教授 (70292042)
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Keywords | 単一光子光源 / もつれ合い光子対発生 / 相関光子対発生 / 単一量子ドット / 光子-電子スピン変換 / 光子相関測定 |
Research Abstract |
量子ドットを用いた量子暗号通信用光源としては、純度の高い単一光子発生に加えて、後段での偏光変調のために高い円偏光度を持つ単一光子の発生が求められている。この場合、単一の量子系として振る舞う単一励起子状態の励起過程、エネルギー緩和過程、および発光準位での滞在時間それぞれの過程で、環境との相互作用に抗してスピン状態がよく保存されなければならない。 当該研究では、電子-正孔間の交換相互作用が抑制可能で、電子スピンの安定性を利用可能な正の荷電励起子を用いて、励起から発光過程までの各素過程でのスピン緩和について外部磁場の無い条件下で検討を進めた。特に、エネルギー緩和過程におけるスピン反転の安定化について、荷電励起子発光の円偏光度の励起エネルギー依存性を検討することにより詳細な実験を行った。結果として、発光エネルギーに対して光学フォノンのエネルギー分高い準位を共鳴的に励起した場合に著しい円偏光度の上昇が観測された。得られた円偏光度は85%にまで達し、外部磁場が無い状態でも非常に高いスピン安定性を得ることが可能であることが示された。更にレート方程式によるエネルギー緩和過程および発光準位でのスピン反転確率の定量的な解析の結果、荷電励起子の発光準位におけるスピン反転時間が、発光寿命に比べて一桁程度長いことが示された。これは前年度報告した中性励起子のスピン反転時間の約3倍長く、交換相互作用の無い荷電励起子の特徴が顕在化されたと考えられる成果である。
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