Research Abstract |
今年度も明治大正期の文献調査及び作品調査を進めた。 文献調査では,当時の地域誌である「歴史と神戸」や,当時の刀剣雑誌類の閲覧を進め,「刀剣会誌」の明治36年6月号に光村氏が主催した刀剣類の鑑賞会の出品リストを新たに見いだすに至った。そのリストからは,個人が主催する会としては破格の規模であることがわかった。また,近代に相次いで刊行されている刀剣雑誌類には,当時の刀剣文化研究上重要な情報が掲載されているにもかかわらず,所蔵施設が少なく,また内容検索が難しいため,これらの雑誌を収集,タイトル入力を行い,研究の一助とした。 作品調査では,明治期の豪農越後長谷川家の所蔵品を持つ個人宅のほか,近代に収集された作品の初公開展示なども見学し,検証を行った。特に,清水三年坂美術館に収蔵されている作品群の中には,光村氏旧蔵品が多いうえ,和鋼博物館に残る作品下絵に合致する作品の収蔵歴があるということが新たに明らかになった。 加えて,「鏨廼花」所載作品の画像・キーワード等のデータベース化に向けた入力作業を昨年に引き続いて行った。「鏨廼花」に関しては,「鏨廼花」所載作品に多くの所蔵品を提供している大阪の芝川氏の子孫への聞き取りを,代理人を通じて行った。 その他,一次資料として金工の下絵集を購入し,画像撮影と分析を行った。貼付られている下絵からは,京都金工,特に大月一門の所有にかかった可能性が認められる他,阿波金工の作品に関わる情報も得られ,当時の金工界を知る上で重要な情報を得るに至った。 また,神戸湊川神社に寄進された灯籠の確認と写真撮影,昨年確認された,竹内栖凰の新出資料について報告された図書を購入し,その分析の結果,作品名称に関し,光村氏の関与があった可能性が仮定された。
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