2006 Fiscal Year Annual Research Report
城下町の景観の動態的変容に関する歴史地理学的研究-デジタルコンテンツ化を通して-
Project/Area Number |
18682004
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
舩杉 力修 島根大学, 法文学部, 助教授 (30314610)
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Keywords | 城下町 / 絵図 / 景観 / 景観復原 / 社会的属性 / 景観変容 / 保存科学 / たたら製鉄 |
Research Abstract |
本研究は、江戸期の城下町松江にかかわる絵図を用いて、デジタルコンテツ化を通じて、城下町松江の景観を復原し、絵図に記載される住人の社会的属性についての分析および、城下町松江の景観の形成と変容についての動態的な分析から、前近代におけるわが国の都市の特性について明らかにするものである。本年度は、(1)城下町松江にかかわる絵図の所在調査を実施した。島根大学附属図書館所蔵の絵図を調査し、その結果は島根大学附属図書館編『絵図の世界-出雲国・隠岐国・桑原文庫の絵図-』としてまとめた。江戸初期の「松江城下町絵図(堀尾期)」は、城下町中心部ではかなり正確に描かれていることが分かり、都市計画図的な絵図ではないかという指摘があった。江戸中期の「松江末次本町絵図」では、江戸後期の町人地区の景観が江戸中期まで遡ることが明らかとなった。(2)松江市所蔵の白潟地区町絵図のうち4点の写真撮影を実施した。写真撮影に際しては、国文学研究資料館、元興寺文化財研究所の指導を受け、保存科学の観点から、絵図に全面的貼ってある貼紙の取り外し作業を、松江市、地元研究者の協力のもと実施した。年度末に画像データが完成した。(3)絵図に記載される文字のうち、貼紙部分の解読を実施した。さらに記載内容の分析を実施した。その結果、蝋燭製造、醸造業など城下町松江の経済活動の一端や、長屋の実態などが明らかとなった。成果の一部は人文地理学会歴史地理研究部会で発表した。(4)絵図に記載される住人については、奥出雲地方でたたら製鉄を経営していた可部屋(桜井家)などが土地を集積しており、松江で鉄の産出にかかわっていたことが明らかになりつつある。現在絵図の研究と並行して雲南市吉田町のたたら製鉄経営者田部家の「鉄方御用留」の分析を進めている。(5)城下町松江の研究を相対化するため、全国各地の城下町のうち、仙台、宮津、大和郡山、伊丹、米子、鳥取などの町絵図の研究成果を集め、松江と比較研究を実施した。
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