2007 Fiscal Year Annual Research Report
城下町の景観の動態的変容に関する歴史地理学的研究-デジタルコンテンツ化を通して-
Project/Area Number |
18682004
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
舩杉 力修 Shimane University, 法文学部, 准教授 (30314610)
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Keywords | 城下町 / 絵図 / 景観 / 景観復原 / 社会的属性 / 景観変容 / 勢力交替 / 結節点 |
Research Abstract |
本研究は、江戸期の城下町松江にかかわる絵図を用いて、デジタルコンテツ化を通じて、城下町松江の景観を復原し、絵図に記載される住人の社会的属性についての分析および、城下町松江の景観の形成と変容についての動態的な分析から、前近代におけるわが国の都市の特性について明らかにするものである。 本年度は、(1)絵図に記載される文字のうち、原図部分の解読を開始した。さらに記載内容の分析を実施した。その結果、原図の作成年代が明らかとなった。付箋から安永9年(1780)前後の作成であることが分かった。貼紙の年代は天保12年(1841)であるので、60年の開きがあることとなる。(2)原図と貼紙とを比較すると、特に寺町付近で借家が増加していることが分かった。松江の人ロデータを見ると、天明7年(1787)31,161入(内町方15,526人)が天保9年(1838)には36,073人(内町方20,506人)と人口が増加している。借家が人口の増加を吸収している可能性が高いことが明らかとなった。(3)絵図に記載される住人についても引き続き分析を行った。魚町の犬山屋惣右衛門は、安永期には、借家を含めると13間半もの間口を有しているものの、天保期には屋敷が売却、分割されており、屋敷の間口は借家を含めてわずか3間となっていた。犬山屋は、江戸初期に、町の重立として史料に記載がある。江戸後期に町人の勢力交替があったことがうかがえる。(4)横浜町絵図では、安永期には宍道湖沿いの屋敷に、厩が多数みられた。横浜町では、馬を扱う駒市が開催されていたこと、また屋敷地は宍道湖に面していることから、湖と陸とをつなぐ結節点の機能を有していたことが想定される。(5)城下町松江の研究を相対化するため、全国各地の城下町のうち、江戸、松本、金沢、名古屋、岡山、広島、佐賀、平戸などの町絵図の研究成果を集めた。
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