2008 Fiscal Year Annual Research Report
城下町の景観の動態的変容に関する歴史地理学的研究-デジタルコンテンツ化を通して-
Project/Area Number |
18682004
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
舩杉 力修 Shimane University, 法文学部, 准教授 (30314610)
|
Keywords | 城下町 / 景観 / 絵図 / 景観復原 / 社会的属性 / 家族経営 / 女性 / 借家 |
Research Abstract |
本年度は(1)絵図に記載される文字のうち、貼紙の部分の文字を解読した。原図の作成年代は、安永9年(1780)前後、貼紙の年代は天保12年(1841)前後であるので、60年の開きがあることとなるが、ほとんどの町において、居住者の変動がみられることが分かった。変動がみられなかったのは、松江大橋の近くの白潟本町の森脇甚右衛門、佐藤喜八郎など松江藩と関係をもっていた商人であった。彼らは松江藩で産物とされた生蝋やたたら製鉄にかかわる商人であった。居住者に大きな変動がみられるのが松江城下町の特徴であるとみられる。(2)絵図に記載される居住者の社会的属性を検討したところ、原図、貼紙とも、女性がみられることが注目される。なかには、屋敷の所有者にも女性がみられ、後家ではなく、また夫婦で屋敷を所有している例もみられた。さらへには娘や孫娘までが屋敷所有している事例もみられた。これは家族経営のなかで、女性が屋敷所有の権利を有していたことを指すものとみられ、江戸時代の城下町において、商家経営だけでなく、屋敷経営が重要な経営であり、その担い手に女性がみられたことは注目される。(3)また屋敷所有者だけでなく、借家居住者にも女性がみられたことが注目される。これは史料の記載から後家ではなく、女性単独の世帯であると考えられる。またこうした女性が多く住む町は寺町の借家に多くみられ、町によっても性格が異なっていたことが想定される。借家に住むこうした女性居住者がどのような生業を営み、城下町を支えていたのか、今後史料を発掘しながら考察を続けていきたい。(4)城下町の景観の形成過程を検討するため、延宝4年(1676)の「白潟火事図面」を全文解読した。その結果、白潟本町の森脇甚右衛門、伊予屋庄兵衛を除けば、江戸後期にみられる商人はいなかった。江戸中期・後期の間でも城下町のなかでは、社会的変動が激しかったことがうかがえる。さらに表通りにも裏通りにも借家がみられた。特に、裏通りにあたる寺町筋には裏借家が多数見られた。裏通りに借家が構成される社会的構造は、すでに17世紀中期にはみられたことが注目される。
|
Research Products
(1 results)